脱出 (1972年のアメリカ合衆国の映画)

脱出（Deliverance）

『脱出』は、1972年に公開されたアメリカのサスペンス・アドベンチャー映画です。この映画は、ジェームズ・ディッキーの原作を基にジョン・ブアマンが監督を務め、撮影はヴィルモス・ジグモンドが手掛けています。主演にはジョン・ヴォイトなど、後に著名な成功を収めるキャストが揃っており、映画はサバイバルをテーマにした緊迫したストーリーを展開します。

映画は、自然の美しい風景の中、ルイス、エド、ボビー、ドリューの4人の男たちが最後の川下りを楽しむ旅を描いています。彼らはダムの建設により消えることになる渓流を訪れ、バカンス気分でアウトドアを楽しもうとします。だが、彼らが向かう場所は観光地として発展していない過疎地であり、地元の人々の警戒心を招いてしまいます。

現地の住民との交流はスムーズには進まず、川を下るために車を搬送してくれる人を探す過程で、不安な雰囲気が漂います。そんな中、ルイスが率いる彼らは二台のカヌーを使って川に出発し、豊かな自然を満喫します。

しかし、彼らの旅行は、思わぬ方向へと進んでいきます。ある夜、エドとボビーが岸辺を散策中に、地元の男性から暴力的な攻撃を受け、危険な状況に巻き込まれるのです。ルイスが弓矢で男を射抜くことで事件は収束しますが、その男はすぐに命を落とします。この出来事によって、彼らは今後の行動をどうするかを考え始めます。果たして警察に届け出て正当防衛を主張するのか、それとも罪を隠すのか。説得が交わされる中、ルイスは秘密を抱えることを提案します。

結局、彼の意見に従い、彼らは死体を隠すことに決めます。しかし、決定した後、ドリューの不幸な事故が彼らの旅をさらに混乱させます。彼は川に落ち、カヌーは急流に翻弄され、惨事が続きます。この試練によって彼らは互いの意見の相違が明らかになり、友情や信頼も危機にさらされることになります。

映画は、サバイバルの過酷さだけでなく、人間の心の葛藤や道徳的な選択を鋭く描写しています。第45回アカデミー賞では3部門にノミネートされ、多くの評価を得た一方で、『ゴッドファーザー』や『キャバレー』といった強豪との競争に敗れ、受賞には至りませんでした。

『脱出』は、映画としての意義や価値に加えて、自然環境問題や倫理的ジレンマを考えさせる深いテーマを持つ作品として、多くの観客に衝撃を与えました。

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