腸重積症

腸重積症：乳幼児から成人まで、その原因と治療

腸重積症は、腸の一部が別の腸管部分に入り込むことで起こる、消化管の緊急疾患です。主に乳幼児に多くみられ、激しい腹痛や血便を伴うため、迅速な診断と治療が不可欠です。

腸重積症とは？

腸重積症とは、腸管の一部が隣接する腸管に逆行性に進入し、腸閉塞を引き起こす病態です。小腸が大腸の中に侵入することが多く、回盲部（小腸と大腸の境目）で発生することが最も一般的です。

この状態が続くと、重積した腸管の血流が悪くなり、腸管の壊死や穿孔、腹膜炎といった重篤な合併症につながる可能性があります。そのため、早期発見と迅速な治療が非常に重要です。

原因

腸重積症の原因は、年齢によって異なります。

乳幼児

乳幼児では、腸管のリンパ組織の肥大が主な原因と考えられています。ウイルス感染（ロタウイルスやアデノウイルスなど）や、腸管出血性大腸菌などの感染症が、リンパ組織の肥大を招き、重積を誘発する可能性があります。また、腸管の異常（ポリープ、メッケル憩室など）、アレルギー性疾患、嚢胞性線維症なども危険因子として挙げられます。まれに、ロタウイルスワクチン接種後にも発症することが報告されています。

成人

成人では、腫瘍や腸管の炎症、憩室などが原因となることがあります。また、高齢者では、腸管の蠕動運動の低下も重積症の発症に関与する可能性があります。

症状

腸重積症の症状は、年齢や病状の進行度によって異なりますが、共通して見られる症状としては以下のものがあります。

間欠性腹痛： 15～20分間隔で、激しく繰り返す腹痛が特徴的です。乳幼児では、この間歇的な腹痛によって、間欠的に泣き叫ぶことが多く、「間欠啼泣」と呼ばれます。
嘔吐： 多くの場合、初期症状として嘔吐がみられます。
血便： イチゴジャム状またはトマトケチャップ状の粘血便（下血）が出ることがあります。これは、重積した腸管の虚血によって腸粘膜が損傷したためです。
腹部腫瘤： 重積した腸管が腹部を触診すると触れることがあります。右上腹部（右季肋部）に腫瘤が触知されることが多いです。

診断

腸重積症の診断には、腹部超音波検査が有用です。超音波検査では、重積した腸管が「ターゲットサイン」と呼ばれる、同心円状の輪状構造として観察されます。また、血液検査やレントゲン検査なども併用して診断を行います。

治療

腸重積症の治療は、症状の重症度や患者の年齢、全身状態などを考慮して決定されます。

超音波監視下高圧注腸療法

嘔吐発症から24時間以内であれば、超音波監視下高圧注腸療法が第一選択となります。これは、肛門から生理食塩水を注入することで、重積を解消する方法です。超音波で腸管の状態を確認しながら行うため、安全に整復できる可能性が高いです。しかし、この方法で整復できない場合や、嘔吐発症から24時間以上経過している場合は、手術が必要となる可能性があります。

開腹手術

超音波監視下高圧注腸療法で整復できない場合、あるいは嘔吐発症から24時間以上経過している場合は、開腹手術が選択されます。手術では、重積した腸管を元の位置に戻し、必要であれば壊死した腸管を切除します。

予後

早期に適切な治療が行われれば、多くの場合、良好な予後が期待できます。しかし、治療が遅れると、腸管の壊死や穿孔、腹膜炎、敗血症といった重篤な合併症を引き起こし、生命に危険が及ぶこともあります。

まとめ

腸重積症は、乳幼児を中心に発生する緊急度の高い疾患です。特徴的な症状（間欠性腹痛、血便など）を認めた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。早期診断と治療によって、重篤な合併症を防ぎ、良好な予後を得ることが期待できます。

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