臧洪

臧洪（ぞう こう）

臧洪は、後漢末期の混乱期を生きた武将であり政治家です。字は子源といい、徐州広陵郡射陽県（現在の江蘇省揚州市宝応県射陽湖鎮）の出身でした。父は臧旻という人物です。

人物と経歴

臧洪は、その体格と容貌の良さで評判が高く、孝廉に推挙されて郎となり、県令に任命されました。同時期に任命された人物には、王朗、劉繇、趙昱などがいます。臧洪は即丘県の県令としてその職務を全うしました。

霊帝の時代末期には官位を捨てて故郷に戻りましたが、張超にその才能を高く評価され、郡の功曹として太守の実務を代行するようになりました。董卓が朝廷を掌握し、皇帝を殺害する暴挙に出ると、臧洪は張超に挙兵を促しました。張超は臧洪の進言を受け入れ、兄である張邈に相談し、張邈もまた挙兵の意向を持っていたため、共に義兵を挙げることとなりました。

張邈は兵を率いて、他の諸侯と共に酸棗に集結しました。張邈が張超に臧洪の人となりを尋ねると、張超は臧洪を絶賛しました。張邈も臧洪と面会し、その優れた人物ぶりを認めました。劉岱や孔伷といった諸侯とも親交があったため、橋瑁を含む義兵を挙げた諸侯たちは、盟約を結ぶ場で誓約の言葉を述べる役割を互いに譲り合った末、臧洪にその役を託しました。臧洪は見事にその役目を果たし、周囲を感動させました。しかし、彼らの軍は董卓軍と戦うことなく、兵糧が尽きたために解散することとなりました。

その後、張超は劉虞への使者として臧洪を派遣しましたが、臧洪は河間まで来たところで袁紹と公孫瓚が交戦していたため、任務を果たすことができませんでした。臧洪が袁紹と会見すると、袁紹は臧洪を気に入り、互いに友好関係を結ぶこととなりました。当時、青州刺史であった焦和が亡くなっていたため、袁紹は臧洪にその後任として青州の統治と軍隊の鎮撫を任せました。当時の青州は、前任の焦和が盗賊に対処できなかったために荒廃していましたが、臧洪は在任した2年の間に盗賊を鎮圧し、治安を回復させました。

その手腕を高く評価した袁紹は、臧洪を兗州の東郡太守に任命し、臧洪は東武陽に移り住むこととなりました。

この頃、張超は一族と共に雍丘において曹操軍に包囲されていました。人々は臧洪が袁紹から恩義を受けていること、そして袁紹と曹操が友好的な関係にあることから、臧洪が救援に駆けつけることはないだろうと考えていました。しかし、張超だけは臧洪が必ず救援に来てくれると信じ、ただ時間の制約で間に合わないことだけを心配していました。臧洪は裸足で駆け出し、配下の兵士をかき集めると共に、兵馬を借りて救援に向かいたいと袁紹に願い出ましたが、許可されませんでした。結局、雍丘は陥落し、張超は自害、一族もろとも滅ぼされてしまいました。

張超を見殺しにした袁紹を恨んだ臧洪は、袁紹との絶交を宣言しました。袁紹は臧洪が立て籠もる城に軍を送り包囲すると共に、臧洪の旧友である陳琳に手紙を書かせ、降伏させようと試みました。しかし、臧洪は返書を送ってこれを拒絶しました。

袁紹軍の攻撃は激しさを増し、城中の兵糧は底を尽きました。臧洪は司馬を呂布のもとへ派遣し援軍を求めましたが、援軍が来ないことを悟ると、城内の者に脱出を促しました。しかし、人々は飢餓の中でも臧洪に従い続けました。彼らは鼠を食べて飢えを凌ぎ、それすらもなくなると、薄い粥を将兵全員で分け合いました。ついには、臧洪が自らの愛妾を殺害し兵士に振舞ったため、将兵たちは涙を流して感謝しました。やがて城は陥落し、男女7千から8千人が討ち死にしましたが、臧洪だけは生け捕りにされました。袁紹は臧洪を惜しみ、あくまで屈服させようとしましたが、臧洪が拒絶し続けたため、ついに殺害しました。

臧洪の書生であった同郷の陳容は、東郡の丞を務めており、臧洪によって落城前に脱出させられていました。袁紹は臧洪との対面の場に陳容を同席させましたが、臧洪が殺害されそうになると袁紹を罵ったため、共に殺害されました。袁紹配下の者たちは、ひそかに「今日は二人も烈士を殺してしまった」と嘆いたといいます。また、臧洪が先に呂布への援軍の使者として派遣した2人の司馬も、帰還して落城を知ると、敵陣に突入し戦死したと伝えられています。

評価

唐順之は、臧洪について「友を救うことも、功を立てることも、主君に貢献することもできなかった。しかし、張超の信頼を裏切らず、良心の呵責もなく、君主と親族の誇りに値する高い名声を得た」と評価しています。

臧洪の忠義と勇気は、後世に語り継がれ、多くの人々に感銘を与えました。

伝記資料

『後漢書』巻58 列伝第48
『三国志』巻7 魏書7 呂布臧洪伝第7

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