自由演奏会

自由演奏会は、楽器を愛する人々が集い、共に音楽を奏でるための機会を提供するユニークな取り組みです。この活動は、チューバ奏者である杉山淳氏の呼びかけにより、1997年4月27日に神奈川県横浜市の「かながわアートホール」で産声を上げました。その最初の地であるかながわアートホールでの開催は、今も「元祖自由演奏会」として親しまれています。

参加のハードルをなくす

自由演奏会の最大の特徴は、参加にあたって演奏の経験や技術、楽団への所属の有無などを一切問わない点にあります。楽器は持っているものの、演奏する場所や仲間がいない人、あるいは普段活動している楽団の枠を超えて多様な音楽家と交流したい人など、あらゆる層の音楽愛好家が対象です。開催の目的は、演奏の機会を生み出し、参加者同士の親睦を深めることに置かれています。当初は主に吹奏楽楽器を演奏する人々が中心でしたが、近年では杉山氏自身が、楽器の種類を問わず、歌唱を含む全ての音楽を愛する人、そして音楽に憧れを持つ人にも参加を呼びかけており、その門戸はさらに広がっています。

多様な開催形態と運営

自由演奏会の運営は、多岐にわたる形式で行われています。個人の呼びかけによるものから、自治体が主催するイベントの一環として開催されるものまで様々ですが、その多くは実行委員会形式が取られています。大規模な開催では、提唱者である杉山淳氏に加え、指揮者の堺武弥氏、さらには著名な作曲家などが指導や指揮を務めることもあります。また、楽器メーカーであるヤマハ株式会社の協力体制も整っており、所定の手続きを経て申請することで「ヤマハ株式会社協賛」として開催することも可能です。

全国に広がる活動と規模

自由演奏会は、特定の場所に限定されることなく、全国各地で開催されています。開催を希望する人が主催者となり、各地でイベントが企画されます。個別の演奏会は単発のイベントとしての性格が強いものの、提唱者である杉山氏を軸とした横のつながりが強く、年間を通じて全国で40回前後の開催実績があります。参加者数は数十人規模の小さなものから、数百人が集まる大きなものまで様々です。特に、毎年秋にヤマハの協賛を得て開催される「自由演奏会○○」（○○には西暦が入る）と銘打たれたイベントには、毎回1000人近い演奏者が集まるなど、大規模な合奏の機会も提供しています。過去には東京ベイNKホールや横浜文化体育館、代々木第二体育館といった大きな会場が使用されたこともあります。参加者の多くは開催地近隣から集まりますが、中には熱心に全国各地の自由演奏会を訪れる愛好家も存在します。持ち込まれる楽器も吹奏楽楽器を中心に多岐にわたり、参加者の年齢層も幅広く、社会人が中心ですが、地元の小中学校や高校、大学の吹奏楽部員が参加する姿も見られます。過去には2004年の浜名湖花博のような大規模イベントで、約450人が参加して演奏会を行った実績もあります。

事前準備なしで楽しむ

自由演奏会は、事前の練習を設けないのが一般的です。参加者は原則として開催当日の午前に会場に集まり、受付や会場準備を行った後、合奏練習に入ります。昼食休憩を挟んで午後にその成果を発表し、終演後に後片付けをして解散、という流れが基本となります（ただし、例外もあります）。参加は基本的に事前予約制ですが、当日でも参加人数に余裕があれば、楽器と参加料を持参すれば受け付けてもらえる場合が多いです。打楽器などの大型楽器で運搬が困難なものは、主催者側で用意されることもあります。楽譜は吹奏楽用のものが主催者によって準備され、当日に配布・回収されます。譜面台は各自の持ち込みが推奨されています。飲食は各自で用意し、服装に特別な規定はなく普段着で参加する人が大半ですが、中には個性的なコスプレを楽しむ常連参加者もいます。

自由演奏会は、音楽を愛する人々が気軽に集まり、演奏する喜びを分かち合うための貴重な場として、全国各地で親しまれています。

もう一度検索