自転車道は、
自動車の交通から構造的に分離された、
自転車専用の通行空間です。一部では
歩行者との共用となっている場合もあります。
自転車道は、主に以下の2種類に分けられます。
都市部の自転車道: 日常生活での自転車移動を安全にするため、市街地の車道に併設されるタイプです。英語では、cycle track, separated bike lane, protected bike laneなどと呼ばれます。
郊外の自転車道: サイクリングを目的として、郊外の川沿いや廃線跡などに独立して設置されるタイプです。英語では、solitary cycle track, shared-use pathなどと呼ばれます。
また、日本では
自動車との混在区間を含む
サイクリングコースを
自転車道と呼ぶこともあります。これはbicycle routeに近い概念です。
歴史と現状
欧米では、
自転車道の整備は
19世紀後半から始まりました。特に、
オランダや
ドイツでは早くから
自転車道の整備が進んでいますが、
イギリスやアメリカでは、
自転車愛好家からの反対や財政的な問題から、一時的に整備が停滞した時期もありました。
イギリスでは、
19世紀後半に
自転車愛好家たちが運動を展開し、
1888年に
自転車が交通手段として公認されました。1934年にはロンドンに
車道併設型の
自転車道が初めて整備されましたが、
自転車愛好家からの反対運動もあり、整備は停滞しました。
1950年代にはニュータウンで
自転車道のネットワークが整備されましたが、利用率は低く、2010年代になってから
自転車道の整備が再び本格化しています。
オランダでは、
19世紀末に
自転車が急速に普及し、世界初の
自転車道路が造られたとされています。戦後は、
自動車の普及により
自転車の利用率が低下しましたが、
1970年代に
モータリゼーションによる事故や環境問題が深刻化したことで、
自転車の重要性が見直されました。
市民運動が活発化し、
自転車道の整備が進められ、1990年代には政府が「Masterplan Fiets」という枠組みのもと、
自転車インフラの整備を推進しました。
現在、
オランダの道路総延長の24〜25%が
自転車道であり、世界有数の
自転車先進国となっています。
ドイツでは、
アウトバーンの改修・新設には
自転車道路の併設が義務付けられています。2015年には、
ドイツ初の
自転車専用高速道路が開通しました。
アメリカ
アメリカでは、
1967年にカリフォルニア州デイビスに初めて本格的な
自転車レーンが整備されましたが、
自転車は
車道の運転者として扱われるべきとの思想が広まり、
自転車道の整備は一時停滞しました。
2000年代に入り、
ニューヨーク市が簡易的な
自転車道を試験的に導入したところ、交通事故の減少や
自転車交通量の増加などの効果が見られたため、他の都市にも
自転車道が広がっています。
自転車レーンは、
自転車道の代替インフラとして考えられることがありますが、
自転車道のように
自動車交通から分離されているわけではないため、安全性の面で課題があります。
バス自転車共用レーン
バスレーンを
自転車も利用できるバス
自転車共用レーンも存在しますが、バスとの接触事故の危険性があるため、注意が必要です。
定義
日本では、
道路法などの法令に規定された
自転車の通行に供される道路を指します。一般的には、
自転車レーンや
歩行者用道路、
サイクリングロードなども含めて「
自転車道」と呼ぶことがあります。
種類
日本の[[自転車]]道は、機能面からA種とB種に分類されます。
A種自転車道: 日常生活での利用を目的としたもので、車道に併設されることが多いです。
B種自転車道: スポーツやレクリエーションを目的としたもので、
サイクリングロードとして整備されることが多いです。
歴史
日本における
自転車道の法制化は
1970年ですが、それ以前にも
自転車道は存在していました。
新渡戸稲造の著書にも
自転車道の記述が見られます。戦後、
モータリゼーションが進む中、
自転車道の必要性が高まり、
1970年に「
自転車道の整備等に関する法律」が制定されました。
1973年には、大規模
自転車道整備事業が開始され、
サイクリングロードの建設が始まりました。
法令上の定義
日本の法令上の「
自転車道」は、以下のものを含みます。
自転車専用道路
自転車歩行者専用道路
道路構造令に規定された自転車道・自転車歩行者道
これらの「自転車道」の総延長は、2006年時点で7万8638kmに達しています。
道路構造令で定義される自転車道は、縁石線や柵などで区画された車道の一部を指します。道路交通法では、自転車道は車道とは別個の車道として扱われ、原則として双方向通行が可能です。
自転車道がある道路では、自転車は原則として自転車道を通行しなければなりません。
自転車道は、縁石線や柵などで連続して区画されていることが要件です。また、自転車専用の道路標識が設置されています。
車道上の自転車レーンは、自転車道には該当しません。歩道上の自転車レーンも同様です。
サイクリングロードは、B種の自転車道に分類され、道路法の自転車専用道路等として整備されることが多いです。自転車の通行のために設けられた独立した道路であり、河川敷や湖岸などに整備されています。
設計基準
自転車道の幅員は、道路構造令により定められており、2メートル以上を原則としています。
設計速度は、A種自転車道では時速15km、B種自転車道では時速30kmとされています。
日本における現状と問題
日本では、自転車道の総延長は7万8638kmですが、そのうちの91.7%は自転車歩行者道であり、自転車専用の通行空間としては十分とは言えません。
自転車道の整備にはコストがかかるため、自動車交通の処理能力を低下させるとも考えられ、整備が進んでいません。
また、自転車道が連続したネットワークを形成していないという問題点もあります。
自転車の歩道通行については、双方向通行が可能であることや、車道との間の分離施設によって、自動車からの死角に入りやすく、交通事故を誘発する危険性も指摘されています。
サイクリングロードの多くは河川敷に設置されており、自転車の高速走行に適しています。しかし、歩行者も利用しているため、トラブルが発生しやすいという問題点もあります。
まとめ
自転車道は、自転車の安全な通行を確保するための重要なインフラです。欧米では整備が進んでいますが、日本でも法制化され、整備が進められています。しかし、自転車道にはまだ多くの課題があり、整備をさらに進める必要があります。
関連項目
日本の[[自転車]]
日本の道路
自転車専用道路
自転車歩行者専用道路
大規模
自転車道
ナショナルサイクルルート
歩道
車道
自動車道
サイクリングターミナル
サイクルトレイン