興国寺 (和歌山県由良町)

興国寺（こうこくじ）

興国寺は、和歌山県日高郡由良町に位置する臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を鷲峰山（しゅうほうざん）と称します。本尊は釈迦如来です。この寺は、その長い歴史の中で、多くの文化的な側面を持ち合わせています。

歴史

興国寺は、安貞元年（1227年）に高野山金剛三昧院の願生（がんしょう、俗名：葛山景倫）によって創建されました。当初は真言宗の寺院であり、西方寺と称していました。願生は、主君であった源実朝の菩提を弔うために寺を建てました。実朝が暗殺された承久元年（1219年）に出家した願生に対し、実朝の生母である北条政子は、彼の忠誠心に報いるため、西方寺のある由良荘の地頭に任命しました。

その後、願生は親交のあった心地覚心（法燈国師）が宋から帰国すると、正嘉2年（1258年）に彼を西方寺の住職として迎え、開山としました。後醍醐天皇からは寺号として興国寺を賜ったと伝えられています。覚心は、普化尺八を奏する居士4名を宋から連れ帰り、興国寺に住まわせたため、当寺は普化尺八の本山的な役割を担うようになりました。その弟子の一人である虚竹禅師（寄竹）は、尺八の元祖として知られています。また、興国寺は熊野・伊勢地方への布教も積極的に行いました。覚心が宋で習得した金山寺味噌の製法は、弟子から人々に伝わり、後に醤油が誕生するきっかけとなったとされています。

天正13年（1585年）、羽柴秀吉の紀州征伐によって伽藍の大部分が焼失しましたが、慶長6年（1601年）に紀州藩主・浅野幸長によって再興されました。昭和31年（1956年）には臨済宗妙心寺派から独立し、臨済宗法燈派大本山となりましたが、昭和61年（1986年）に再び妙心寺派に復帰しました。地元では、由良開山（ゆら・かいさん）として親しまれています。

伽藍

興国寺には、歴史的な価値を持つ多くの伽藍があります。

本堂：1797年に再建された建物です。
天狗堂：天狗を祀るお堂です。
大門、山門、鐘楼：寺の入り口を守る重要な建造物です。
尺八道場：普化尺八の伝統を受け継ぐ道場です。
禅堂：座禅を行うための場所です。
位牌堂：先祖の位牌を安置するお堂です。
開山堂：開山である心地覚心を祀るお堂です。
書院、庫裏：寺の生活を支える建物です。

文化財

興国寺には、多くの文化財が保存されています。

重要文化財（国指定）

木造法燈国師坐像：弘安9年（1286年）に作られた、心地覚心の坐像です。
絹本著色法燈国師像：正和4年（1315年）に描かれた心地覚心の肖像画で、一山一寧の賛があります。
紙本墨書誓度院規式：寺の規則を記した古文書です。

和歌山県指定無形民俗文化財

灯籠焼：毎年行われる伝統的な行事です。

天然記念物（国指定）

門前の大岩：寺の入り口にある大きな岩で、自然の力を感じさせます。

札所

紀伊之国十三仏霊場 第8番：巡礼地の一つです。

交通

鉄道：JRきのくに線紀伊由良駅から徒歩約30分。

周辺情報

興国寺の周辺には、自然と文化を楽しめるスポットがあります。

白崎海洋公園：美しい海岸線と海を望む公園です。
由良海つり公園：海釣りを楽しめる公園です。
重山：ハイキングや自然散策が楽しめる山です。
熊野古道：歴史ある巡礼路です。

興国寺は、その長い歴史と文化的な背景から、多くの人々にとって魅力的な場所です。訪れる人々は、静寂の中で歴史を感じ、豊かな自然に癒されることでしょう。

関連項目

普化宗：尺八を宗派に取り入れた宗派。
* 金山寺味噌：興国寺が発祥とされる味噌。

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