心地覚心

心地覚心（しんち かくしん）

心地覚心は、鎌倉時代に活躍した臨済宗の僧侶で、その足跡は多岐にわたります。彼は、興国寺（和歌山県）、妙光寺（京都市）、安国寺（広島県）、安養寺（長野県）といった名刹を開山し、禅宗の発展に大きく貢献しました。法燈円明国師とも称され、その生涯は、仏道への献身と禅の探求に彩られています。

生涯

出生から出家、受戒まで

建永元年（1206年）、心地覚心は信濃国（現在の長野県）に、地頭の息子として生まれました。幼少期から学問に励み、15歳で出家。29歳で東大寺にて具足戒を受け、正式な僧侶となりました。

諸師に学ぶ

受戒後、心地覚心は高野山で真言密教を学びました。また、鎌倉では退耕行勇に師事し、密教禅を修めました。この退耕行勇は、鎌倉幕府の将軍である源実朝と親交が深く、その霊を弔うために高野山に金剛三昧院を開山しました。その後、心地覚心は、道元から菩薩戒を受け、また、栄西の弟子である釈円栄朝にも師事しました。各地で様々な師に学び、見識を深めました。

入宋、そして帰国

兄弟子である円爾の勧めにより、心地覚心は中国へ渡ります。径山寺では、円爾の師である無準師範は既に亡くなっていましたが、癡絶道沖や荊叟如珪に師事して禅を学びました。阿育王山での修行を経て、霊洞山護国仁王寺にて無門慧開に師事し、遂に臨済宗楊岐派の法を継承しました。無門慧開からは「無門関」「月林録」を授けられ、建長6年（1254年）に帰国しました。

帰国後の活動

帰国後、心地覚心は金剛三昧院に滞在し、師の無門慧開の著書を請来しました。その後、金剛三昧院の住職を務めましたが、由良に戻り、興国寺を開山しました。その後も、京都で妙光寺を開山するなど、各地で禅宗の普及に尽力しました。

晩年と遷化

晩年、亀山上皇に招かれましたが、高齢を理由に辞退し、興国寺に戻りました。永仁6年（1298年）、92歳でその生涯を閉じました。没後、法燈禅師、法燈円明国師の諡号が贈られました。

人物像とエピソード

心地覚心は、尺八を愛好したことで知られ、普化宗の祖ともされています。また、中国から持ち帰ったとされる金山寺味噌は、径山寺の味噌の製法を模したものであり、信州味噌の誕生にも関わったと伝えられています。

法燈国師と一遍

多くの僧が法燈国師に参禅しましたが、時宗の開祖である一遍もその一人でした。一遍は法燈国師から禅の印可を得たとされ、その師弟関係は、一遍の思想形成に大きな影響を与えたと考えられます。

著作と弟子たち

心地覚心の著作としては、「法燈国師坐禅儀」「法燈国師法語」「遺芳録」などが知られています。また、多くの弟子を育て、高山慈照、恭翁運良、東海竺源、孤峰覚明、慈雲妙意、孤山至遠などが名を連ねています。


心地覚心は、その生涯を通して禅宗の発展に大きく貢献し、多くの人々に影響を与えました。その足跡は、今もなお、多くの人々に語り継がれています。

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