興宗寺 (福井市)

興宗寺：七百余年の歴史を刻む福井の古刹

概要

福井県福井市松本に位置する興宗寺は、浄土真宗本願寺派に属する由緒ある寺院です。牛鼻山を山号とし、700年以上の歴史を誇る古刹として、地域に深く根付いています。本記事では、興宗寺の創建から現代までの歩み、著名な人物との関わり、そして周辺環境について詳細に解説します。

興宗寺の創建と発展

興宗寺の開基は行如と伝えられています。彼は円善という人物の高弟であり、越前国坂井郡田島（現在の坂井市坂井町田島付近）で布教活動に従事していました。1290年頃には道場を開き、1311年には覚如上人が大町道場を訪れた際に教えを受け、「教行信証」の伝授や宗祖の鏡御影の開帳に携わったことで、本願寺系寺院となりました。

「反古裏書」には、覚如上人から教えを受けた寺院として興宗寺が早くも記録されており、本願寺との深い繋がりを示しています。その後、行如から円慶、慶祐など歴代の住職によって興宗寺は発展を続けました。

蓮如上人との関わり

興宗寺は、蓮如上人とも深い縁で結ばれていました。蓮如が越前吉崎に下向した際、興宗寺第五世円慶が供奉したと伝えられています。蓮如は興宗寺に滞在し、文明3年（1471年）7月15日には御文章第一章を作成しました。吉崎御坊の建立にも貢献し、蓮如から「牛鼻山」の山号と方便法身尊像を拝領しました。これは吉崎牛ケ鼻に興宗寺の多屋があったこと、または円慶が隠居した加賀月津の牛ケ鼻に掛所があったことによるものとされています。

寺基の移転と近世

当初、越前長畝郷田島にあった興宗寺は、1587年、北ノ庄城主堀秀政の寄進により柳町に移転しました。その後、大火を機に現在の宝永小学校付近に移り、堂々たる伽藍を構えました。しかし、戦災と福井地震により建物は壊滅的な被害を受け、現在の場所へ移転しました。

掛所と下寺

興宗寺には、いくつかの掛所や下寺がありました。加賀月津の太子堂（のちに加州興宗寺、現在の牛鼻山興宗寺）は、当初から但馬興宗寺（現在の興宗寺）と密接な関係にあり、子息のいない場合は互いに助け合うなど良好な関係を保っていました。しかし、本願寺が東西に分派した際に、それぞれ西派と東派に分かれました。また、山下道場（のちの西念寺、吉崎寺）は、蓮如上人の越前での布教活動に大きく貢献し、興宗寺門徒の大家彦左衛門が中心となり、吉崎御坊の建立に尽力しました。

岩佐又兵衛との関係

有名な絵師、浮世又兵衛（岩佐又兵衛）は、興宗寺第十世心願の推挙により福井藩の絵師となりました。福井で20年余りを過ごした後、江戸に移り活躍した又兵衛ですが、遺言により遺骨は興宗寺に納骨され、興宗寺は岩佐家の菩提寺となりました。又兵衛の墓は、福井地震後も小学校敷地に残り、昭和62年に現在の興宗寺境内地に移転されました。

聖徳幼稚園

興宗寺境内には聖徳幼稚園が併設されています。昭和25年（1950年）に開設され、仏教精神に基づいた教育を行っています。仏教讃歌にも力を入れており、本願寺福井別院の法要にも参加しています。

まとめ

興宗寺は、700年以上の歴史の中で、多くの出来事を経て現在に至っています。覚如、蓮如、岩佐又兵衛といった著名な人物との関わりや、数々の掛所・下寺の存在は、興宗寺の豊かな歴史と地域社会における重要な役割を示しています。今後も、地域に根ざした寺院として、その役割を果たしていくことでしょう。

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