興津町 (千葉県)

興津町（おきつまち）の歴史と地理

興津町は、1921年（大正10年）1月1日から1955年（昭和30年）2月11日まで、千葉県夷隅郡に存在した町です。現在の勝浦市南西部に位置し、町制施行前は清海村（きよみむら）と呼ばれていました。この地域は、房総丘陵に位置し、山がちな地形が特徴的です。また、太平洋に面しており、海岸線が広がっています。

古代から中世

興津町の歴史は、縄文時代から弥生時代にかけての遺跡が発見されていることから、古くから人々が生活していたことが伺えます。しかし、この地域の活動は比較的低調だったようです。守谷湾東岸には、「こうもり穴」と呼ばれる海食洞穴があり、1920年代に東京帝国大学によって発掘調査が行われました。この地域では古墳が発見されていませんが、文献から畿内政権との結びつきが強かったことがわかっており、海食洞穴や横穴が古墳の代わりに使用されたと考えられています。

律令期には、安房国長狭郡の東端に位置し、和名抄には「置津郷」として記録されています。史料や出土品から、海人による漁労が盛んで、朝廷に大量のアワビを納めていたことが窺えます。

鎌倉時代には、土豪の佐久間氏の勢力下に入り、興津城が築かれました。妙覚寺は、興津城主の佐久間重貞が日蓮に帰依して開いたと伝えられています。戦国時代には、真里谷武田氏、次いで安房正木氏の拠点となり、その後、里見義頼が興津城を攻め落とし、里見氏の支配下に入りました。後北条氏が滅亡した後、上総一円は徳川家康の領国となり、興津は大多喜城に配された本多忠勝の支配地となりました。

近世から近代

江戸時代初期、興津は大多喜藩の領地となり、本多氏の後には阿部氏が支配しました。元禄期以降、守谷・興津・浜行川・大沢の4村（興津四ヶ浦）は天領または清水領となり、興津組という組合村を組織しましたが、鵜原村は岩槻藩の支配下に置かれ、勝浦町とのつながりが強まりました。東廻り航路の寄港地となり、仙台藩、南部藩、米沢藩、津軽藩などの交易船が寄港し、賑わいました。特に仙台藩は、奥津陣屋を設けて諸事務にあたらせていました。

明治時代に入り、宮谷県、木更津県を経て、千葉県に編入されました。1905年（明治38年）には、興津の集落の半分以上を焼失する大火が発生しました。漁業が中心の産業構造でしたが、守谷の森矗昶がヨード製造から森コンツェルンを立ち上げました。

沿革

- 1872年（明治5年）：守谷、興津、浜行川、大沢など9村が木更津県第27区1画となる。
- 1873年（明治6年）：千葉県成立に伴い、大沢村、浜行川村、興津村、守谷村、鵜原村などが第6大区1小区となる。
- 1878年（明治11年）：郡区町村編制法により、大沢・浜行川および守谷・鵜原が連合村、興津は独立村となる。
- 1889年（明治22年）：町村制施行により、大沢村、浜行川村、興津村、守谷村、鵜原村などが合併し、夷隅郡清海村となる。
- 1921年（大正10年）：町制施行し、夷隅郡興津町となる。
- 1955年（昭和30年）：勝浦町、上野村、総野村と合併し、夷隅郡勝浦町となり、興津町は消滅する。

人口

(詳細な人口データは省略)

教育

興津町には、以下の小学校がありました。

- 興津町立興津小学校: 明治7年に興津小学校として開校し、清海尋常小学校、国民学校を経て、昭和22年に興津町立興津小学校となる。
- 守谷小学校: 明治7年に守谷小学校として開校し、清海尋常小学校に合併後、分校として再設置され、守谷尋常小学校となる。その後、清海東尋常小学校へ合併。
- 興津町立東小学校: 鵜原小学校が守谷小学校の分校として開校し、鵜原尋常小学校、清海東尋常小学校、国民学校を経て、昭和22年に興津町立東小学校となる。
- 興津町立西小学校: 浜行川小学校として開校し、興津小学校の分校、清海西尋常小学校、国民学校を経て、昭和22年に興津町立西小学校となる。
- 大沢小学校: 大沢小学校として開校し、興津小学校の分校、浜行川分校へ合併。

興津町立興津中学校は、興津国民学校の高等科を前身とし、昭和22年に開校しました。

交通

- 鉄道: 日本国有鉄道（現JR東日本）外房線が通り、鵜原駅と上総興津駅がありました。
- 道路: 国道128号が通っていました。

観光地

- 鵜原理想郷: 大木遠吉鉄道大臣の秘書であった後藤杉久が開発した別荘地。大臣経験者が多く購入したため大臣村とも呼ばれましたが、関東大震災と昭和恐慌の影響で開発計画は中止となりました。
- 守谷海水浴場: 本州でも屈指の透明度を誇る遠浅の海水浴場です。湾内には渡島が浮かび、「快水浴場百選」「日本の渚百選」にも選ばれています。
- 興津海水浴場: 外房でも有数の海水浴場として発展しました。
- おせんころがし: 浜行川地区の海に面した崖で、「孝女おせんの碑」が建っています。

著名な出身者

- 安西直一 (興津村村長経験者)
- 安西浩
- 安西正夫
- 安西邦夫
- 森矗昶
- 岩瀬亮 (政治家)

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