房総丘陵

房総丘陵の詳細

房総丘陵は、千葉県の房総半島中南部に位置する丘陵地帯で、かつての安房国と上総国にまたがっています。地理的には、富津岬の南の磯根岬付近から大網白里市北部を結ぶ線の南東側を指し、北に向かうにつれて標高が下がり、房総台地へと続いています。観光ガイドなどでは、木更津市と茂原市を結んだ線以南を房総丘陵とすることが一般的です。

地形と地質

房総丘陵の最高峰は愛宕山で、地質は主に第三紀の三浦層群と第四紀の上総層群から構成されています。しかし、地殻変動の影響で複雑に入り組んだ地質構造をしています。特に、鋸山から加茂川の地溝帯を経て鴨川市のおせんころがしの海食崖に至る線によって、北部の上総丘陵と南部の安房丘陵に分けられます。

上総丘陵には、養老川、小櫃川、小糸川が蛇行しながら流れ、谷底平野を形成しています。鹿野山、高宕山、清澄山などの山々が連なり、豊かな自然が広がっています。清澄山から養老渓谷にかけてはカシ類の混交林が、その他の地域ではコナラ、クリ、常緑広葉樹林や山武杉の人工林が見られます。かつての薪炭生産地には、房総スカイラインや県道24号千葉鴨川線が整備され、マザー牧場、清和県民の森、三島湖、高宕山自然動物園などが観光スポットとして開かれています。養老川流域には多くのゴルフ場も開発されています。

安房丘陵の北部に位置する嶺岡山地では、蛇紋岩が風化した地すべりが見られます。この地域は酪農が盛んで、牛乳生産が活発です。館山平野南部の丘陵には、シイやタブノキなどの暖帯林が茂り、館山野鳥の森があります。

主な山

安房丘陵
嶺岡愛宕山 (408m)：千葉県の最高峰
清澄山 (377m)
二ッ山 (376m)
御殿山 (363m)
富山 (349m)
元清澄山 (344m)
伊予ヶ岳 (336m)
嶺岡浅間 (336m)
烏場山 (266m)

上総丘陵
鹿野山 (379m)
石尊山 (347m)
八良塚 (342m)
御獄山 (341m)
高宕山 (330m)
鋸山 (329m)
嵯峨山 (315m)
大福山 (292m)
三石山 (282m)
音信山 (186m)
野見金山 (179m)
三舟山 (139m)

特徴的な地質と地形

房総丘陵はフォッサマグナ内に位置し、新しい地層から構成されています。南部には「嶺岡帯」、北部には「東金崖線」といった特徴的な地質帯があります。これらの地質帯は、北東側の銚子市付近に見られる中生代の地層とは対照的です。

嶺岡帯: 愛宕山を中心とした嶺岡山系に沿って東西に分布し、蛇紋岩、玄武岩、斑れい岩、石灰岩、チャート、閃緑岩、結晶片岩、凝灰岩などが複雑に分布しています。この特異な地質構造は、既存のプレートテクトニクスの理論では説明が難しいとされています。
黒滝不整合: 勝浦市吉尾のボラの鼻では、下位の安房層群（三浦層群とも呼ばれる）清澄層の整然とした砂岩泥岩互層の上に、上位の上総層群黒滝層の礫岩が重なっているのが観察できます。両者の境界は黒滝不整合面と呼ばれ、礫岩が下位の地層を30メートル以上も削り込んでいるのが特徴です。
笠森層: 上総丘陵を構成する上総層群の最上位層で、長南町笠森の大岩の上には笠森寺の観音堂が、山武市の石塚山の岩石上には不動院長勝寺の浪切不動堂が建っています。山武市付近の地層は従来金剛地層と呼ばれていましたが、笠森層と同時代のもので、上総層群の最上位層にあたります。
房総丘陵ケスタ地形: 笠森層は砂質砂岩や泥質砂岩からなり透水性が低いため、小櫃川や養老川上流域では急峻なケスタ地形が形成されています。これにより、下総層群の上に堆積した関東ローム層が侵食を受けにくく、下総台地の方が標高が高いという「地形の逆転」現象が生じています。
東金崖線: 九十九里平野と東京湾岸の分水界であり、大網白里市の小中池付近では、南白亀川水系の支流である小中川が村田川を河川争奪した地形が見られます。

房総丘陵は、豊かな自然と多様な地質、地形が織りなす魅力的な地域です。その独特な景観と地史は、訪れる人々に多くの発見と感動を与えてくれるでしょう。

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