興行戦争

プロレスにおける興行戦争：団体間の熾烈な争奪戦

プロレスラーや格闘技団体は、プロ野球やサッカーのように統一組織やコミッショナーによる年間スケジュールの管理がありません。そのため、各団体は独自の興行日程を決定しますが、特に大型イベントの開催時には、ライバル団体が同時期、近隣会場で興行を行う「興行戦争」が発生することがあります。これは、人気レスラーの獲得や観客動員数をめぐる激しい競争の表れと言えるでしょう。

興行戦争の背景

興行戦争の主な原因は、団体間の競争と、興行主や人気レスラーの威信維持にあります。ライバル団体が大型イベントを発表すると、自団体の人気を維持するため、あるいは個人的な理由から、対抗イベント開催を決断するケースが多いです。結果として、人気レスラーや外国人選手獲得競争が激化し、トラブルや裁判に発展することもあります。 また、テレビ放映権やスポンサー獲得といった経済的な要素も、興行戦争を背景で支えていると言えるでしょう。

主な興行戦争の事例

日本

日本プロレスと国際プロレスは、何度も興行戦争を繰り広げました。特に有名なのは、1967年の「大阪夏の陣」、1968年の「隅田川の対決」、1971年の東京都体育館・蔵前国技館での興行などです。これらの興行では、メインイベントの内容やテレビ放映権の有無などにより、両団体の勢力差が明確になったケースもありました。

ジャイアント馬場とアントニオ猪木という、プロレス界を代表する2人のレジェンドレスラーも、それぞれの団体を率いて記念興行で日程が重なるなど、興行戦争に巻き込まれる場面がありました。1975年の力道山十三回忌記念興行も、両者の対立と政治力、そして猪木が独自路線を貫いた結果、幻に終わった馬場vs猪木戦という伝説を生みました。

1990年代以降も、WAR、UWFインターナショナル、NOWなど複数の団体が興行戦争を繰り広げ、近年では新日本プロレスと他団体、あるいは個人興行との間でスタジアムでの興行戦争なども発生しています。2024年の東京ドームシティホールと東京ドーム、後楽園ホールでの3団体による興行も話題を呼びました。

米国

アメリカでは、WWF（現WWE）の全米進出以降、PPV（ペイパービュー）放送が重視されるようになり、会場での興行よりもテレビでの視聴率が重視される傾向にあります。そのため、1990年代後半から2000年代初頭にかけては、「マンデー・ナイト・ウォーズ」のような、TV番組枠を争う形での興行戦争が行われていました。また、レッスルマニアなどの大型イベント前には、インディー団体が大型興行を開催し、観客獲得競争を繰り広げています。

メキシコ

メキシコでも、WWEとメキシコの大手団体CMLLによる興行戦争が報告されています。

まとめ

プロレスにおける興行戦争は、団体間の競争、人気レスラーの獲得、経済的要素などが複雑に絡み合った現象です。今後も、プロレス界のダイナミズムを象徴する出来事として、注目を集めるでしょう。興行戦争の歴史を振り返ることで、プロレス界の変遷や、レスラーたちの熱い思いを理解することができるでしょう。 興行戦争は、プロレスというエンターテイメントが、いかに熾烈な競争の中で発展してきたかを物語る歴史の一側面と言えるでしょう。今後のプロレス界においても、興行戦争は、一つのエンターテイメント要素として存在し続ける可能性が高いと考えられます。そして、その行方は常に、観客、そしてレスラーたちの動向に左右されることでしょう。

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