舞水端里

舞水端里は、朝鮮民主主義人民共和国咸鏡北道花台郡に位置する行政区画「里」です。この地域は、北朝鮮が開発・保有する弾道ミサイルの主要な発射拠点の一つとして国際的に認識されています。特に、長距離弾道ミサイルであるテポドンシリーズや、中距離弾道ミサイルのムスダンといった名称は、この地名やその旧称に由来するとされています。

地理と名称の由来

地理的には、朝鮮半島東北部の海岸線が日本海に向けて大きく突き出した岬一帯を指します。この海岸線は、標高75メートルから500メートルにも及ぶ断崖絶壁が海に落ち込む雄大な景観を呈しており、海食崖や奇岩怪石が織りなす独特の地形は、北朝鮮の天然記念物にも指定されるほどの自然美を誇ります。

「舞水端」という地名は、朝鮮語の固有語である「무쇠끝（ムスェックッ）」に漢字を当てたものと解釈されています。「무쇠」は「鋳鉄」、「끝」は「端」「果て」を意味し、合わせると「鋳物を作る村のはずれ」といった意味合いになります。この「무쇠끝」の発音に近い「舞水」と、意味が通じる「端」という漢字が採用されたと考えられています。一方、米国側が北朝鮮のミサイルに付与した呼称には、この地名が深く関わっています。有名な「テポドン」は、舞水端一帯が日本統治時代に属していた集落の旧地名「大浦洞（テポドン）」に由来します。また、2007年の朝鮮人民軍創設記念パレードで初めて確認された新型中距離弾道ミサイルの米国側呼称「ムスダン」は、現在の地名である「舞水端」から名付けられました。

歴史的背景

歴史的には、この地域は日本統治時代には明川郡下古面の一部でした。第二次世界大戦後、朝鮮民主主義人民共和国の統治下に入り、現在の行政地名である舞水端里が正式に定められたのは1958年のことです。

ミサイル基地としての機能

舞水端里が国際的な注目を集めるのは、そこに弾道ミサイルの発射に関連する様々な施設が集中しているためです。衛星画像などの分析により、この地域にはミサイル発射台、エンジンの燃焼試験場、ミサイルの点検を行う施設、そして発射を管制するための施設などが存在すると推定されています。これらの施設の建設や運用には、在日本朝鮮人総連合会（朝鮮総連）の科学技術者や協力者が深く関与したとの指摘もあります。

主要な発射活動の歴史

舞水端里の基地は、1984年以降、北朝鮮のミサイル開発計画において重要な役割を果たしてきました。「火星」（スカッド）シリーズやノドンといった初期の弾道ミサイルから、より射程の長いテポドンシリーズに至るまで、様々な種類のミサイル試験発射がここで行われてきました。特に記憶に新しいのは、1998年の出来事です。北朝鮮は「白頭山1号」ロケットによる人工衛星「光明星1号」の軌道投入に成功したと発表しましたが、多くの国は実際には軌道投入は失敗したと分析しており、特に日本国政府はこれを「テポドン1号」と呼称し、弾道ミサイル発射実験とみなしました。この発射も舞水端里から行われています。さらに、2006年の複数のミサイル発射実験においては、江原道安辺郡の旗対嶺基地と共に、舞水端里からもテポドン2号が発射されました。2009年にも、舞水端里から3段式に改良されたテポドン2号の発射実験が実施されています。

これらの活動から、舞水端里は北朝鮮の長距離ミサイル開発における中心的な役割を担ってきたことがわかります。近年では黄海側に建設された東倉里基地も大型ミサイル基地として機能していますが、舞水端里は引き続き重要な施設であると考えられています。この地は、その美しい自然景観とは裏腹に、北朝鮮の軍事戦略における要衝として、国際社会の安全保障上の関心事となっています。

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