花台郡

花台郡（ファデぐん）

花台郡は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の咸鏡北道南部に位置する郡です。郡の東南端に位置する舞水端里には、テポドン発射基地があることで知られています。推定面積は約460平方キロメートル、1990年時点での推定人口は約67,262人です。

地理

花台郡は、朝鮮半島北東部の海岸線が日本海に突き出した場所に位置しています。東側と南側は日本海に面しており、南の海上には洋島が浮かんでいます。海岸線は比較的単調ですが、東部の海岸は高さ70～100mの絶壁となっており、特に舞水端一帯では、高さ75～500mにも及ぶ海食崖が見られます。

郡の北部は標高1000m内外の山地が広がっており、最高峰は下鷹峰（1,043m）です。郡の西端を流れ、金策市との境界をなす南大川（金策南大川とも呼ばれる）をはじめ、郡の中央部を流れる花台川・龍山川・荷坪川などの河川が、南部海岸に平野を形成しています。これらの河川には、荷坪川には荷坪貯水池、花台川には板嶺貯水池が設けられています。

気候

花台郡は海洋性気候の影響を受けており、内陸部と比較して冬の気温が比較的温暖です。年平均気温は7.6度、1月の平均気温は-7度、8月の平均気温は22.2度程度です。年平均降水量は700mm程度です。

土壌・植生

基盤岩は花崗岩・花崗片麻岩で構成されており、土壌は褐色森林土が大部分を占めています。郡の面積の83％は山林で、クヌギ・マツ・クルミなどが生育しています。東部海岸の木津里にある雲満臺一帯には、クコやクルミのほか、タケの貴重な品種である山竹の群落など、南方系の植物が自生しており、北朝鮮政府によって天然記念物第24号「雲満臺山竹群落」として植物保護区に指定されています。その他、錦城里には北部地方では珍しいサンシュユ、錦城里・石城里一帯にはクリの森があります。

歴史

花台郡は、第二次世界大戦後に北朝鮮によって新設された郡です。1945年8月15日時点では、明川郡と吉州郡の一部でした。1952年12月の行政区画再編により、吉州郡東海面、明川郡下古面・下加面の全部と上古面の一部、上加面の一部を合わせて花台郡が新設され、花台邑は旧下加面花台里に置かれました。

産業

耕地は郡面積の13％を占めています。主要な農産物は、コメ、トウモロコシ、ダイズ、野菜、タバコなどです。家畜はウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどが飼育されており、中でもヒツジは花坮羊と呼ばれ、優れた品種の特産物として知られています。荷坪里では養蚕が盛んです。沿岸海域ではタラ、ホッケ、マス、イワシ、イカナゴなどの水産資源も豊富で、道内の主要な水産基地の一つとなっています。特にホッケは、舞水端近海が日本海で最も多く漁獲される海域です。ワカメやノリも品質が良く、舞水端浅海養殖事業所と泗浦水産事業所があります。その他、郡内には酢、家具、農機具、食料工場などが立地しています。

交通

郡内には鉄道は通っていません。南海岸沿いの道路によって西の金策市と、花台川沿いを北へ遡る道路によって吉州・清津方面とそれぞれ結ばれています。花台邑に近い南海岸中部の泗浦里、南海岸東部の舞水端里、東海岸の木津里には港湾があり、主要な港は泗浦港で、清津・羅津への海路が開かれています。

文化・観光

長徳里ではマンモスのような古生物化石が出土しています。下古川流域には高句麗時代の下古川古墳群があり、史跡第64号に指定されています。木津里には七宝山の海七宝月門（天然記念物第310号）があります。日本海に切り立つ舞水端一帯は、城壁岩、仙女岩、総角岩、騎馬岩、猫岩などの奇岩が並ぶ景勝地として知られています。海岸から少し離れた観音峰も奇岩絶壁で知られ、日本海を一望できる名勝となっています。

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