航路標識

航路標識とは

航路標識とは、船舶が安全に航行するために、自身の位置を把握したり、港への入港ルートを確認したりするための指標となる施設のことです。灯台や無線方位信号所、霧信号所などが代表的で、主に岬や港湾などに設置されています。

航路標識は、大きく分けて以下の4種類があります。

光波標識：光や形を利用（灯台、灯浮標など）
電波標識：電波を利用して位置を知らせる（ロランC、ディファレンシャルGPS、無線方位信号所など）
音波標識：音で位置を知らせる（霧信号所）
その他の標識：文字などを利用して知らせる（船舶通航信号所、潮流信号所など）

日本の航路標識法では、航路標識を「灯光、形象、彩色、音響、電波等の手段により港、湾、海峡その他の日本国の沿岸水域を航行する船舶の指標とするための灯台、灯標、立標、浮標、霧信号所、無線方位信号所その他の施設」と定義しています。また、港湾法においては港湾施設の一つと位置づけられています。

航路標識の歴史

航海術の発達に伴い、遠方から自然の物体以外の目印を確認する必要性が高まったことが、航路標識誕生の背景にあります。浮標は、暗礁の位置を示すために航路に浮きを設置したのが始まりとされています。その後、特定の色を塗ったり、夜間に照明を点灯したりするなどの進化を遂げました。

しかし、当初は航路標識に世界共通の規格がなく、各国で様々な規格が生まれ、長年にわたって運用されてきました。色や点灯に関する取り決めも各国で異なっていたため、航海者に混乱を与えることもありました。

1980年に東京で開催されたIALA（国際航路標識協会）の浮標特別会議でIALA海上浮標式が採択され、1982年に発効したことにより、国際的にほぼ統一されました。ただし、側面標識については、A方式（左舷標識が赤）とB方式（右舷標識が赤）の2つの方式が存在します。B方式は、アメリカ合衆国およびその影響下にある国々（南北アメリカ州に属する各国、日本、韓国、フィリピン）で採用されています。

航路標識の種類

光波標識

夜標（灯火を発する）
灯台・灯柱：船舶が航路を変更する主要な地点や、船位・港湾の位置を確認するための目標物です。灯台は、内部に階段などが設置された塔状の構造物です。
灯標：岩礁や浅瀬などの障害物を示すための目標物です。障害物の上に設置されます。
灯浮標：障害物の位置や航路を示すために、海上に浮かべた構造物です。
照射灯：離れた場所から障害物を照射し、その位置を示すためのものです。
導灯・指向灯：狭い水路や湾口などで、船舶が安全に航行するための目標物です。指向灯は、高低差のある2つの灯火で構成されています。
昼標（灯火を発しない）
立標：灯標と同じ役割を果たします。
浮標：灯浮標と同じ役割を果たします。

電波標識

無線方位信号所：中波無線を発信し、船舶に搭載された方向探知機で方向を知らせる中波無線標識と、マイクロ波無線を発信し、レーダー画像上に位置を表示するレーダービーコン・レーマークビーコンがあります。「電波灯台」とも呼ばれます。
LORAN-C：長波無線を発信し、船舶に搭載されたLORAN-C受信機で船位を知らせます。
ディファレンシャルGPS：GPSの誤差補正情報などを電波で知らせます。GPS単独測位の誤差が10m程度であるのに対し、誤差数mと精度が高くなります。

音波標識

霧信号所：濃霧などで視界が悪い時に音を発信し、船舶に岬や突端の方向を知らせます。濃霧が発生しやすい場所に設置されます。

その他の標識

船舶通航信号所：船舶交通の多い海域や大型港湾で、通航情報を電光掲示板などで知らせます。
* 潮流信号所：潮流が速い海域で、潮流の状況を電光掲示板などで知らせます。

日本列島の水源

航路標識は、「水源に向かって左側は緑色」「水源に向かって右側は赤色」と定められていますが、日本列島のほぼ全域の沿岸部分や離島においては、浮標の色を緑か赤かを定めるために、どこかの地点を「日本列島の水源」として決める必要があります。そのため、便宜上、日本では与那国島を「日本列島の水源」として定めています。

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