船通山

船通山（せんつうざん）

船通山は、標高1,142メートルの美しい山で、鳥取県日南町と島根県奥出雲町の県境に位置しています。この山は比婆道後帝釈国定公園の一部であり、島根県東部を流れる斐伊川の源流域に位置しています。山の頂上からは360度の壮大な景色を楽しむことができ、天気の良い日には大山や比婆山連峰、さらには三瓶山や島根半島、場合によっては隠岐島も見ることができます。

神話の源である鳥上山

古くからこの地域では船通山は「鳥上山」や「鳥髪山」とも呼ばれ、特に神話に深く結びついています。『古事記』によると、神スサノオがこの山の麓に降り立ち、八岐大蛇を退治したという伝説があります。この時、スサノオは大蛇の尾から得た天叢雲剣を天照大神に献上したとされています。

山の中ほど、6合目付近には「鳥上の滝」があり、こちらも八岐大蛇の住処とされています。この滝は高さ約10メートル、幅約5メートルで、斐伊川の源流とされ、島根名水100選にも選ばれています。1936年には、宮内省が山頂近くに天叢雲之剣出現地を示す石碑を建立しました。この石碑は、1975年に雷によって破損し、翌年に再建されました。

春の訪れを告げるカタクリの花

船通山の山頂では、春になると一面にカタクリの花が咲き誇ります。この花は、里のカタクリよりも約1カ月ほど遅く開花し、4月中旬から5月初旬まで楽しむことができます。カタクリは可憐な紫色の花を咲かせ、登山者や訪れる人々に春の到来を知らせてくれます。

巨大なイチイの木

鳥取県側の9合目、標高約1,000メートル地点には、天然記念物に指定されているイチイの巨木があります。この木の幹の直径は約4.3メートルもあり、その枝は20メートル以上に広がっています。自然の壮大さと生命力を感じられるスポットです。

宣揚祭の伝統

毎年7月28日には、天叢雲剣を発見した神話に基づく「宣揚祭」が山頂で行われます。この祭りは、1930年に初めて開催され、その後1940年まで続きましたが、一時中断されました。戦後の1968年に復活し、現在も続いています。宣揚祭は、鳥取県と島根県の交互で開催され、須佐之男命の姿に仮装した参加者たちが剣の舞を演じる壮大なイベントです。

このように、船通山は自然の美しさや歴史的な背景、そして地域の文化が交わる場所であり、訪れる人々に豊かな体験を提供しているのです。

もう一度検索