花山院親忠

花山院親忠：華族、神職、教育者としての生涯

花山院親忠（1918年8月3日 - 1994年2月28日）は、日本の華族であり、神職としても重要な足跡を残しました。花山院家36代目当主として、佐賀県立三養基高等学校の校長や春日大社の宮司を歴任し、教育と神道の発展に貢献しました。晩年には奈良県神社庁常任理事、神社本庁評議員、奈良県教育委員会委員なども務めました。

学問を究めた華族の出自

1918年、花山院親家の長男として東京に生まれた親忠は、幼少期から学問に親しみました。1924年に父が亡くなると、わずか6歳で家督を継承。その後、第二開成中学校を経て、1937年に國學院大學国文学科に入学し、国文学者としての道を歩み始めます。國學院大學では、武田祐吉や折口信夫といった著名な学者に師事し、『御湯殿上日記』の研究に没頭しました。1941年に國學院大學を卒業後は、神祇院に嘱託として勤務しました。

教育者・神職としての献身

戦後の1946年、親忠は氷川神社の禰宜に任じられ、神職としてのキャリアをスタートさせます。しかし、戦災で自邸が焼失したため、親戚である鍋島直紹の招きで佐賀県に移住。佐賀県立鹿島高等学校の教諭として教鞭を執る傍ら、佐賀県文化財専門員としても活動し、その探求心から佐賀県民俗学会を創設するなど、地域文化の振興に貢献しました。1969年には佐賀県教育委員会学校教育課長に就任し、教育行政にも携わりました。

1971年、親忠は佐賀県立三養基高等学校の校長に就任。同年には春日大社の宮司にも任命され、奈良へと拠点を移します。春日大社では、奈良の鹿愛護会会長、春日古楽保存会会長、南都楽所会長などを兼任し、文化 preservationに尽力しました。1975年には奈良国立博物館評議員にも就任しています。

1979年には、昭和天皇・香淳皇后が春日大社を訪問された際、親忠は宮司として、春日大社の沿革や鹿について詳細な説明を行いました。天皇・皇后は本殿での拝礼後、舞殿で諸司舞を鑑賞され、親忠はその解説も担当しました。1984年には、ロサンゼルスオリンピックの芸術祭に南都楽所を率いて参加し、各地で和舞と舞楽の公演を開催、ニューヨーク国連本部でも講演を行いました。1986年には、昭和天皇に拝謁し挨拶を述べるという栄誉に浴しました。

1988年には神職身分特級となり、國學院大學評議員会議長に任じられました。1994年2月28日、宮司在任中に病のため逝去しました。

人物像と学問への情熱

親忠は、歴史、文学、民俗学の研究を趣味とし、常に学問の大切さを説いていました。若い研究者との交流も積極的に行い、後進の育成にも尽力しました。佐賀で教師をしていた時代の教え子には、佐賀女子短期大学教授の横尾文子がおり、横尾は親忠の死を深く悼んだと伝えられています。

花山院親忠は、華族としての出自を持ちながらも、教育者、神職として社会に貢献し、文化の発展に尽くした人物でした。その功績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

栄典

1938年（昭和13年）08月15日 - 従五位
1941年（昭和16年）09月01日 - 正五位
1945年（昭和20年）09月 - 従四位
1940年（昭和15年）08月15日 - 紀元二千六百年祝典記念章

著書

『ふるさとの散歩道：肥前・筑後』金華堂、1971年。
『春日の神は鹿にのって』清水弘文堂、1987年。

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