花月園観光

花月園観光株式会社

神奈川県横浜市中区桜木町に本社を構える花月園観光株式会社は、主に公営競技関連施設の管理運営を事業としています。その社名は、かつて運営していた花月園競輪場や、過去に展開していた観光事業に由来しています。

同社の設立は、神奈川県による県営競輪場の計画が端緒となっています。県が花月園遊園地の土地を取得し、その地に競輪場を建設、運営管理するために設立されたのが始まりです。発足当初は神奈川県の主導色が強く、第三セクターに近い形態でした。現在も神奈川県、横浜市、横須賀市が主要な株主として名を連ねています。

競輪場の開設準備段階では、神奈川競輪株式会社（仮称）が設けられ、施設建設が進められました。地元企業である松尾工務店が土木整備を請け負う傍ら、用地補償交渉にも尽力したことから、正式設立後は同社も経営に深く関わることとなりました。こうした設立経緯から、花月園観光は競輪場の施設を中心に保有しましたが、敷地の大部分（約9割）は神奈川県の管理下にある状態でした。

主要事業であった花月園競輪場の運営は、2010年3月31日をもって終了しました。これに先立ち、2008年4月には主催者である神奈川県競輪組合と開催業務等に関する包括受託契約を結びましたが、経済情勢の悪化による売上低迷の影響を受け、県に対し約5億円の損失を補填する事態となりました。この状況から、2009年には契約更新に消極的な姿勢を示しており、同年12月に県競輪組合が花月園での開催から撤退する決定を下したことを受け、競輪場運営からの撤退を公表するに至りました。競輪場廃止後、土地の大半を所有する神奈川県に対して借地権に関する訴訟を提起しましたが、2011年4月に和解が成立しています。和解の内容は、県が花月園観光に10億円を支払う一方で、花月園観光は競輪場の土地・施設全てを県に無償で譲渡し、敷地から退去するというものでした。これにより、本来義務付けられていた土地の更地化と明け渡し義務が免除される形となりました。なお、選手宿舎などの一部施設は訴訟の対象外であり、和解の見通しが立った2011年3月から8月にかけて、関連会社である松尾工務店へ譲渡されています。

過去には、宿泊施設を中心とした観光事業や、店舗・ケータリングによる飲食事業も展開していました。特に鎌倉に所有していた「ホテル日本学生会館」は学生の修学旅行などにも利用され、ユースホステルも併設されていました。これらの観光・飲食事業は2006年までに全て撤退しています。かつて「花月園」の名を冠していた宿泊施設の一部は、関連会社の松尾工務店の子会社である和興通商株式会社へ譲渡されています。

現在の同社は、競輪場外車券売場事業に経営資源を集中させています。2008年には既に4か所の場外売場を傘下に収めるなど、この分野への積極的な進出を進めてきました。また、2013年にはジョイホース浜松への経営参加や、オートレース横浜の開設を通じて、競輪以外の公営競技における場外発売施設の運営事業にも参画しています。

株式においては、2019年9月時点での時価総額が上場維持基準を下回ったため、2019年11月1日に東京証券取引所第二部を上場廃止となりました。以前は株式会社東京ドームが筆頭株主でしたが、同社が2020年1月に株式を売却したことにより、2021年現在は松尾工務店が筆頭株主となっています。

設立（1949年12月、仮称）、花月園競輪場開設（1950年5月）、観光業進出（1952年7月）、花月園観光への商号変更（1958年7月）、東証上場（1962年9月）、競輪場運営終了（2010年3月）、本社移転（2011年4月）、上場廃止（2019年11月）などが主な沿革上の節目として挙げられます。

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