若山喜志子

若山喜志子：歌人としての生涯と業績

若山喜志子(1888-1968)は、明治から昭和期にかけて活躍した著名な歌人です。歌人・若山牧水の妻としても広く知られており、その生涯は激動の時代を背景に、歌人としての才能と女性としての強さを兼ね備えた生き様を示しています。

生い立ちと教師時代

[長野県]]塩尻市]出身の喜志子は、優秀な成績で松本高等女学校への進学を勧められましたが、当時の社会状況から女性の高等教育は容易ではなく、実現しませんでした。[[高等小学校卒業後、補習科を経て、島木赤彦が校長を務めていた広丘尋常高等小学校で裁縫教師として勤務しました。赤彦の影響を受けたという記録はありませんが、この経験が後の創作活動の基礎を築いた可能性は否定できません。その後「女子文壇」への投稿を機に、今井邦子や生田花世といった歌人たちと交流し、横瀬夜雨から高い評価を得るなど、歌人としての才能を開花させていきました。信濃毎日新聞歌壇への投稿も積極的に行っていました。

結婚と創作活動

1911年、親族を頼って上京した喜志子は、1912年に若山牧水と結婚。夫の主催する同人誌『創作』で作品を発表し、本格的な歌人としての活動をスタートさせました。1913年には長男を出産、その後も2女1男をもうけました。しかし、夫の多忙な生活と、自身の病弱さ（結核）を背景に、経済的な苦労や孤独に直面しながらも、創作活動を続けました。夫の旅の留守を支え、貧しくも充実した日々を送る中で、多くの歌を詠み、その作品群は時代状況や自身の心情を深く反映しています。

牧水没後と晩年

1928年、夫・牧水の死後、喜志子は「牧水全集」(全12巻)の編纂を完成させました。その後、『創作』を主宰しましたが、のちに義弟である長谷川銀作に委任しています。昭和初期を代表する女流歌人として、『主婦之友』や『婦人之友』で長く選歌を務め、多くの歌人たちに影響を与えました。1968年、東京都立川市で永眠しました。1981年には「若山喜志子全歌集」が刊行され、その作品群は現在も高く評価されています。

代表的な歌集

喜志子の歌風は、繊細で情感豊かであり、その作品には、時代の変化や自身の内面世界が克明に表現されています。主な歌集として以下のものがあります。

無花集（大正4年）
白梅集（大正6年）
筑摩野（昭和5年）
埴鈴集（昭和15年）
芽ぶき柳（昭和26年）
眺望（昭和36年）

これらの歌集を通じて、喜志子の歌人としての軌跡と、時代を反映した深い感性を垣間見ることができます。

参考文献

もろさわようこ「信濃のおんな 下巻」未來社、1969年
小高賢編「近代短歌の鑑賞77」新書館、2002年
福田はるか「赤彦とアララギ 中原静子と喜志子をめぐって」鳥影社、2015年
「美術人名辞典」思文閣、2016年

これらの文献は、若山喜志子の生涯や作品をより深く理解する上で貴重な資料となっています。

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