若山彰

若山 彰（わかやま あきら）

概要

日本の歌手。1927年7月4日、広島県三原市に生まれ、1998年12月9日に71歳で没した。武蔵野音楽大学を卒業後、流行歌の世界に進出。1957年に大ヒットした映画の同名主題歌「喜びも悲しみも幾歳月」で確固たる人気を築いた。日本クラウンの設立に参画するなど、歌謡界の発展にも貢献。そのレパートリーは多岐にわたり、抒情歌、軍歌、ご当地ソング、球団歌など、幅広いジャンルで数多くの楽曲を歌い継いだ。

生涯

音楽への道

若山彰は、広島県で繊維問屋を営む家庭に生まれた。幼い頃から歌うことが好きだった彼は、旧制広島文理科大学在学中に参加した音楽コンクールで3位に入賞したことを機に、本格的に音楽の道を志すことを決意。改めて武蔵野音楽学校（現・武蔵野音楽大学）に入学した。当初はオペラ歌手を目指していたが、学業の傍らで伊藤久男の楽曲「イヨマンテの夜」のバックコーラスを務めた経験が、彼を流行歌の世界へと引き寄せた。その後、作曲家の米山正夫に師事し、歌謡界でのキャリアを歩み始める。

デビューとブレイク

大学を卒業した1951年、24歳で日本コロムビアよりシングル「星空」で歌手デビューを飾った。同年、久慈あさみが主演した新東宝映画「牝豹の地図」では流しの役で出演するなど、活動の幅を広げた。しかし、デビュー当初はヒット曲に恵まれず、下積みの時期が続いた。私生活では、1953年に歌手の安藤まり子と結婚し、一女をもうけるも、1956年には離婚している。

転機が訪れたのは1957年、木下惠介監督の映画『喜びも悲しみも幾歳月』の主題歌を任されたことである。同名の主題歌は映画とともに記録的な大ヒットとなり、若山彰の名は全国に知れ渡り、人気歌手としての地位を確固たるものとした。この成功を機に、彼は1957年から4年連続でNHK紅白歌合戦に出場するなど、多忙な日々を送ることとなる。

幅広い活動と貢献

1963年には、作詞家の星野哲郎らと共に、新たに設立されたレコード会社「日本クラウン」の創立に中心メンバーとして参加し、日本コロムビアから移籍した。日本クラウン移籍後も「老いらくの恋」などのヒット曲を生み出し、キャリアを継続した。1975年にはシャンソン・カンツォーネ国際コンクールに出場し、銀賞を受賞するなど、国際的な評価も得ている。

若山彰の歌唱スタイルとレパートリーは非常に多様であった。「愛情物語」「南極観測隊の歌」「氷海越えて」「惜春鳥」「さいはて岬」「娘へ」「戦いすんで日が暮れて」といった抒情的な歌謡曲に加え、「空の神兵」「敵は幾万」「加藤隼戦闘隊」「昭和維新の歌（青年日本の歌）」「月月火水木金金」などの軍歌を情感豊かに歌い上げたことでも知られる。さらに、「長崎県民歌・南の風」「木更津にて」「この明るさのなかにゆけ」（福井国体歌）といった各地のご当地ソング、『特別機動捜査隊』の挿入歌、そしてプロ野球球団歌である読売ジャイアンツの「闘魂こめて」や阪神タイガースの「阪神タイガースの歌（通称：六甲おろし）」も彼の代表的な持ち歌となった。特に「阪神タイガースの歌」については、若山が歌唱したバージョンが阪神甲子園球場で使用されたことがきっかけで、当時の朝日放送アナウンサー中村鋭一氏を通じて多くのファンに浸透し、現在の定着に繋がったとされている。

晩年

1990年には脳梗塞に見舞われるが、リハビリを経て歌手活動に復帰した。その後、進行性の難病である進行性核上性麻痺を患い、闘病生活を送りながらも歌への情熱を失わず、活動を続けた。1998年12月9日、71歳でその生涯を閉じた。墓所は故郷である広島県三原市の香積寺にある。

若山彰は、その卓越した歌唱力と幅広い音楽性をもって、日本の歌謡史に確かな足跡を残した歌手である。

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