若狭国分寺

若狭国分寺について

若狭国分寺は、福井県小浜市国分に位置する曹洞宗の寺院です。山号を護国山と称し、本尊には釈迦如来を祀っています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺のうち、若狭国国分僧寺の後継寺院にあたります。本稿では、現在の寺院と、その前身である古代寺院跡、若狭国分寺跡（国の史跡）について解説します。2015年には、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群」の構成文化財として日本遺産に認定されました。

概要

若狭国分寺は、小浜市街から東へ約4.5キロメートル、北川の左岸に位置しています。聖武天皇の詔によって創建された国分寺の法灯を受け継ぐ寺院であり、現在の境内は古代の国分寺跡と重なっています。近年の研究では、当初は付近の地方豪族の氏寺が国分寺として転用されましたが、平安時代初期に現在の場所へ新たに建立されたと考えられています。江戸時代には金堂跡に釈迦堂が再建され、現在に至るまで薬師如来坐像（国の重要文化財）などの貴重な文化財が伝えられています。

古代国分寺跡については、1972年から発掘調査が行われ、1976年には国の史跡に指定されました。この遺跡は、一般的な国分寺跡と比較して建物規模が小さいことや、寺域内に古墳が残っていることが特徴です。なお、国分尼寺の正確な場所はまだ特定されていません。

歴史

国分寺の創建時期は正確には不明です。国分寺建立の詔が天平13年（741年）に出された際、当初は東方にあった地方豪族の氏寺、太興寺廃寺が若狭国分寺に転用されました。その後、平安時代初期に現在の場所へ寺院が建立されたと考えられています。

この説の根拠としては、当地から8世紀の瓦が出土しないこと、建物が小規模で平安時代の寺院に似ていること、慶長8年（1603年）の文献に大同2年（807年）の建立と見えることなどが挙げられます。瓦については、経済的な理由から瓦葺きではなかったとする説もあります。ちなみに、太興寺廃寺や若狭神宮寺では平城京系の瓦が出土しています。

『延喜式』には、若狭国の国分寺料として稲1万束が当てられていたと記されています。また、鎌倉時代中期の文献には、僧寺と尼寺の寺領が記載されており、この時代までは両寺院が存続していたことがわかります。その後、両寺院は衰退したと考えられています。

江戸時代には、慶長16年（1611年）に小浜の住人、山田一徳によって釈迦堂が建立されましたが、後に破損したため、宝永2年（1705年）頃に再建されています（現在の釈迦堂）。

近現代においては、以下の変遷をたどっています。

1972-1974年：発掘調査
1976年12月23日：国分寺跡が国の史跡に指定
1979-1983年：史跡環境整備

境内

現在の堂宇のうち、釈迦堂（本堂）は古代国分寺の金堂跡に建てられています。明通寺の文書によると、宝永2年（1705年）頃に建立されたとされています。内部には本尊の釈迦如来坐像（小浜市指定有形文化財）が安置されています。釈迦堂は、正面五間・側面五間（12.17メートル×10.96メートル）、入母屋造で、屋根は茅葺きですが、現在は鉄板で覆われています。内部は三間×二間を内陣とし、その前の三間×一間に礼堂が設けられています。

釈迦堂の西側には薬師堂があり、中央に薬師如来坐像（国の重要文化財）、左に釈迦如来坐像、右に阿弥陀如来坐像（いずれも小浜市指定有形文化財）が安置されています。薬師如来坐像は元々尼寺庵の本尊とされ、釈迦如来坐像と阿弥陀如来坐像は、廃絶した寺院の主尊であったと推測されています。

また、境内には国分寺古墳があります。これは直径約50メートルの円墳で、若狭地方では最大級であり、6世紀頃に築造されたと推定されています。現在は墳頂に若狭姫神社が祀られています。

若狭国分寺跡

僧寺跡は、現在の国分寺と重なる位置にあります。寺域は2町四方（約218メートル四方）で、条理線とも一致しています。伽藍は南から南大門、中門、金堂、講堂が一直線に配置され、中門の左右から出た回廊が金堂の左右につながっています。中門の東には塔が配置されています。発掘調査により、以下の遺構が確認されています。

金堂：本尊を祀る建物で、現在の釈迦堂と重なっています。基壇は東西28.8メートル・南北21.9メートルで、前面に2ヶ所の階段があり、東西に参道が伸びています。基壇上の礎石は残っていませんが、根石群から建物は桁行三間・梁間二間で、四面に庇が付いていたと推定されています。
塔：釈迦の遺骨（舎利）を納めた塔で、寺域の南東部、中門の東に位置しています。基壇は15.3メートル四方で、白鳳期の寺院跡よりも大きい規模です。基壇上には2個の礎石が残っており、建物は三間四方、8.1メートル四方と、基壇の割には小規模であったと考えられています。建物は五重塔であったと推測されています。
講堂：経典の講義や教説などを行う建物で、金堂の北方約35メートルの地点で掘立柱の柱穴が検出されています。
中門：金堂の南に位置しています。
南大門：中門の南に位置していますが、詳細は不明です。

寺域からの出土品としては、須恵器、土師器、緑釉陶器、金銅製水煙破片、風鐸破片などがあります。特に、8世紀の瓦がほとんど出土しないことが注目されており、経済的理由による瓦不使用説や、平安時代初期の創建説が唱えられています。

また、国分寺古墳は塔跡の南西に位置し、主要伽藍のすぐ近くに古墳が残る珍しい例となっています。

文化財

若狭国分寺には、多くの文化財が伝えられています。

重要文化財（国指定）

木造薬師如来坐像：鎌倉時代の作で、薬師堂に安置されています。寄木造で、像高79.7センチメートル。元禄6年（1693年）に尼寺庵の本尊として祀られました。

国の史跡

若狭国分寺跡：1976年12月23日に指定されました。

小浜市指定文化財

有形文化財
国分寺釈迦堂：江戸時代、宝永2年（1705年）頃の建立。1999年3月24日指定。
木造釈迦如来坐像：躯部は鎌倉時代、頭部は江戸時代の作と推定されます。釈迦堂の本尊で、像高318センチメートルの巨像です。
木造釈迦如来坐像：鎌倉時代前期の作で、薬師堂に安置されています。像高85.7センチメートル。元は廃絶寺院の主尊でした。
木造阿弥陀如来坐像：鎌倉時代前期の作で、薬師堂に安置されています。像高86センチメートル。元は廃絶寺院の主尊でした。

現地情報

所在地：福井県小浜市国分53-1
交通アクセス
鉄道：JR小浜線 東小浜駅から徒歩約20分
バス：西日本ジェイアールバス「若狭国分」バス停下車
周辺
福井県立若狭歴史博物館
西縄手下遺跡（若狭国府跡の可能性あり）
* 若狭彦神社・若狭姫神社（若狭国一宮・二宮）

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