若神子城

若神子城（わかみこじょう）

若神子城は、現在の山梨県北杜市須玉町若神子に位置していた中世の山城です。現在、その跡地は「若神子城跡」として北杜市の史跡に指定されています。

城の構成と立地

若神子城は、北杜市の北西部に位置し、西川と湯川によって形成された三本の尾根上に築かれています。北から順に北城、古城、南城という三つの郭で構成されています。

北城：小手指坂の南に位置し、東西約100メートル、南北約400メートルの規模を持ちます。西側と南側には土塁が残されています。
古城：西側の尾根上に位置し、東西約100メートル、南北約200メートルの規模です。明治時代の大火の際に土取りが行われたため、一部破壊されています。
南城：台地の東側の張り出し部分に築かれており、かつては東漸寺があった場所とされています。1982年の土取り工事により破壊され、その際、茶臼や常滑焼の破片などの遺物が出土しました。

歴史

『甲斐国志』によると、若神子城は甲斐源氏の祖である新羅三郎義光によって築かれ、その子孫である源義清、清光へと伝えられたとされています。

戦国時代には、武田氏による信濃侵攻の際に、甲斐と信濃の国境における重要な拠点として機能しました。佐久や諏訪方面からの狼煙の中継地点や、軍勢の陣を敷く場所として利用されました。

武田氏滅亡後の天正10年（1582年）には、武田氏の旧領を巡る争いである天正壬午の乱が勃発。この戦いでは、信濃国から侵攻した北条氏直が若神子城を本陣とし、周辺の城砦に軍勢を配置しました。一方、徳川家康は新府城を本陣とし、七里岩台上の城砦に布陣して北条勢と対峙しました。しかし、同年10月には徳川・北条同盟が成立し、北条氏は甲斐と都留郡から撤退しました。

発掘調査と遺構・遺物

1982年（昭和57年）には、農村公園の建設に伴い古城の発掘調査が行われ、薬研堀や掘立柱建物跡が発見されました。また、1984年（昭和59年）には北城の発掘調査が行われ、柱坑列や内耳土器、かわらけなどが出土しました。しかし、これらの遺構や遺物から時代を特定できるものは見つかっていません。

発掘調査の結果、北城、古城、南城のいずれも、北側の防御が手薄であることが指摘されています。

地名の遺称

若神子城周辺には、当時の名残を伝える地名が残っています。古城の北東の沢は「たつのくち」、南城の東側の沢は「新羅くぼ」と呼ばれています。

参考文献

『日本歴史地名大系19 山梨県の地名』平凡社、1995年
八巻與志夫「若神子城の性格」『須玉町史 通史編 第1巻』須玉町史編さん委員会編、2002年

関連項目

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