茂住修身

茂住 修身（もずみ おさみ）

日本の書家、そしてかつて内閣府の職員として公務に携わった人物です。1956年（昭和31年）に岐阜県吉城郡古川町（現在の飛騨市古川町）に生を受け、その地で少年期を過ごしました。書家としての号は菁邨（せいそん）と称しています。

学歴としては、1974年（昭和49年）に岐阜県立斐太高等学校を卒業後、大東文化大学に進学。経済学部経済学科にて学びを深め、1980年（昭和55年）に同大学を卒業しました。

大学卒業後、1980年（昭和55年）4月には総理府（現在の内閣府）に入府し、国家公務員としての道を歩み始めます。長年にわたり、内閣府において重要な筆耕業務を担いました。2005年（平成17年）には内閣府大臣官房人事課の辞令専門官に就任。この役職を通じて、国が栄誉を称える際に贈られる国民栄誉賞の賞状、国家的な功績を認められた個人や団体への内閣総理大臣表彰状に筆を執るほか、様々な公文書である辞令の作成といった業務を専門的に手掛けました。その精緻かつ品格のある書体は、数々の公的な場面を彩ることとなりました。

2016年（平成28年）3月に定年退職を迎えましたが、その後も再任用職員として引き続き内閣府での職務に従事しました。政府の重要な政策や組織の顔となる看板の揮毫も数多く担当しており、民主党政権時代には復興庁や国家戦略室の看板文字を、また自民党政権下では一億総活躍推進室の看板の書を手掛けるなど、政権の変遷に関わらず、その筆の力は政府の中枢で求められ続けました。さらに、自身の故郷である飛騨地域にも貢献しており、飛騨市美術館や飛騨の山樵館の看板、そしてJR飛騨古川駅前の看板の揮毫も担当しています。

茂住氏のキャリアにおいて最も広く知られる業績の一つが、新元号「令和」の揮毫です。2019年（平成31年）4月1日、来る同年5月1日の改元を前に、首相官邸にて当時の内閣官房長官であった菅義偉氏が新しい元号として「令和」を発表した際、その場に掲げられた文字こそ、茂住氏の筆によるものでした。偶然ながら、昭和から平成への改元の際に新元号「平成」の文字を揮毫した河東純一氏は、茂住氏と同じ大東文化大学の先輩であり、さらに内閣府では上司にあたる存在でした。書家としての師事先も共通しており、二人とも高名な書家である青山杉雨氏に教えを受けています。

2021年3月をもって内閣府を退官しました。退官に際し、同年3月30日には、かつて自身が揮毫した「令和」を発表した当時の内閣総理大臣である菅義偉氏と面会しています。長年にわたり、内閣府の顔ともいえる重要な公文書や看板の筆耕を一手に引き受け、特に「令和」の文字を通じて歴史的な瞬間に立ち会った人物として、その名は記憶されています。

もう一度検索