茂山郡

茂山郡(ムサンぐん)とは

茂山郡は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の咸鏡北道北部に位置する郡です。豆満江上流域の山間部に位置し、中国との国境に接しています。特に茂山鉱山は、北東アジア最大規模の鉄鉱石埋蔵量を誇ることで知られています。

地理

茂山郡は、豆満江上流域の茂山高原に位置し、周囲を山々に囲まれた地形です。豆満江を隔てて中国と国境を接し、北東には会寧市、東には富寧郡、東南には清津市、南には鏡城郡、西南には延社郡が隣接しています。

歴史

茂山郡の歴史は古く、高句麗や渤海などの古代国家の領域であった時代を経て、朝鮮王朝初期に朝鮮の領土に編入されました。1438年には、北方経営のために茂山鎮が築かれ、この地名が生まれました。朝鮮王朝時代には茂山府が置かれ、咸鏡道の重要な拠点となりました。

植民地時代には、咸鏡北道茂山郡として、朝鮮半島で最大の面積を誇る郡でした。豆満江上流の高原地帯は林業が盛んで、茂山鉱山の開発に伴い鉄道も敷設されました。

1952年の行政区画再編により、現在の茂山郡が形成されました。この際、西側の白頭山・摩天嶺山脈を含む広大な領域から分離され、延社郡や会寧市の一部となりました。また、1977年から1985年にかけては清津直轄市に編入された時期もありました。

年表

1438年 - 古茂山に茂山堡を設置
1509年 - 鎮を廃茂山に移転、僉使鎮に昇格
1674年 - 鎮を三峯坪に移す(現在の茂山邑)
1684年 - 茂山都護府に昇格
1895年 - 茂山郡に改編
1914年 - 郡面併合により、咸鏡北道茂山郡に10面が成立
1939年 - 邑面が茂山面に改称
1940年 - 茂山面が茂山邑に昇格
1946年 - 永北面・豊渓面が合併し、永豊面が発足
1947年 - 茂山邑と永豊面の一部が合併し、茂山面が発足。永豊面は会寧郡に編入
1952年 - 郡面里統廃合により、茂山郡を設置(1邑18里)
1953年 - 延水里が延社郡に編入
1954年 - 遊仙郡の芝草里・西湖里を編入。三長里が延社郡に編入
1961年 - 彰烈里が彰烈労働者区に、馬養里が馬養労働者区に昇格
1977年 - 清津直轄市茂山郡となる
1979年 - 茂山邑の一部が分立し、南山労働者区・三峯労働者区が発足
1981年 - 梁永里がセゴル里に改称
1985年 - 咸鏡北道茂山郡となる
1988年 - 降仙労働者区の一部が分立し、朱草労働者区が発足
1989年 - 馬養労働者区の一部が清津市に編入
1990年 - 虚彦里が閔峯里に改称

産業

茂山郡の主要産業は、茂山鉱山における鉄鉱石の採掘です。茂山鉱山は、北東アジア最大級の鉄鉱石埋蔵量を誇り、その埋蔵量は30億トン、可採埋蔵量は13億トンと推定されています。日本統治時代には三菱鉱業によって開発が進められ、採掘された鉄鉱石は主に清津や城津の製鉄所に供給されていました。

北朝鮮成立後も、金策製鉄所や城津製鉄所で鉄鉱石の精錬が行われていましたが、1990年代以降の経済的困難により、製鉄所の機能が低下し、採掘も中断されました。しかし、2005年以降は中国資本の投資により、採掘が再開されています。

下部行政区画

現在の茂山郡は、1邑(邑は日本の町に相当)と6つの労働者区、15の里で構成されています。

交通

茂山郡には、茂山線と白茂線、茂山鉱山線が通っています。

茂山線: 金佩駅 - 新站駅 - 西豊山駅 - 朱草駅 - セギル駅 - 鉄松青年駅 - 茂山鉄山駅 - 茂山駅
白茂線: 頭岩駅 - 延上駅 - 興岩駅 - 南村駅 - 茂山駅
茂山鉱山線: 鉄松青年駅 - 茂山鉱山駅

まとめ

茂山郡は、豊富な鉄鉱石資源を有する北朝鮮の重要な地域です。歴史的な変遷を経て、現在の行政区画に至り、鉄鋼業を中心に発展してきました。経済状況に左右されながらも、茂山鉱山の存在は、茂山郡の経済を支える重要な要素となっています。

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