范縝

范縝（はんしん）について

范縝は、生没年は不詳ですが、南朝齊から梁にかけて活動した官僚かつ学者です。本貫は南陽郡順陽県で、字は子真、従弟には范雲がいます。彼は、無神論を展開した著作『神滅論』で特に知られており、その思想は多くの人々に影響を与えました。

経歴

范縝は、父の范濛の息子として生まれました。彼は東晋の平北将軍である范汪の六世の孫で、また宋の中書侍郎・范璩之の孫でもあります。早くに父を失い、貧しい家庭環境の中で母に孝道を尽くしました。成年になる前に劉瓛の講義を受け、その教えに感銘を受けたことから彼に弟子入りしました。この時期、范縝は学問に専念し、劉瓛の門徒の中で頭角を表しました。

学びの環境は豊かな者が多かったにもかかわらず、彼は貧しい家庭のままであり、その境遇を恥じない姿勢が印象的です。成長と共に経学に精通し、特に三礼についての知識が豊かでしたが、性格は質素であり、友人たちに対しては常に正直であったため、少々気難しい印象を与えていました。そんな中でも唯一、外弟の蕭琛とは親しい関係を築いていました。

初めは斉の寧蛮主簿として職につき、その後も様々な官職を歴任し、最終的には尚書殿中郎にまで昇進しました。永明年間に斉と北魏の間で和親が成立すると、范縝は北魏に赴くこととなり、名を馳せるようになりました。その後、竟陵王蕭子良に招かれるものの、彼が仏教を信じるのに対し、自らは無神論を唱えました。

建武年間には領軍長史に転任し、宜都郡太守としても勤務しましたが、母の死を契機にその職を辞し江州に戻って喪に服しました。東征軍が来た際には、戦時用の喪服を着て蕭衍を迎え、彼との縁から後に晋安郡太守として任命されます。この期間、彼は清廉な姿勢で知られ、その実績を残しました。

その後は建康に呼ばれ、尚書左丞として仕官しますが、親戚に何も残すことはなく、ただ前尚書令王亮とは親しい友人関係を維持し、食事を共にすることが多かったです。後に王亮が罪に問われた際にはそれに連座して広州に流されますが、長年の流浪を経てようやく建康に帰ることができました。彼は中書郎、国子博士として再び在官のまま生涯を閉じました。

神滅論

范縝の思想的な偉業は『神滅論』として知られており、これは彼の無神論を示す重要な著作です。斉の時代に、竟陵王蕭子良に近侍していた際、蕭子良は熱心な仏教徒でした。蕭子良が「あなたは因果を信じないが、どうして富貴と貧賎が生まれるのか」と尋ねると、范縝は「人の生は一つの樹の花に例えられる。同じ枝に生じ、一つのへたに開いても、風により落ちる場所が異なるように、貴賎もまた同様です。因果は結果に過ぎず、それを問う必要は無い」と論じました。このやり取りは非常に刺激的で、蕭子良は反論に苦しんだといいます。

その後、彼はこの理論を整理し『神滅論』を著しました。この書が発表されるや、蕭子良は僧侶を集めて反論させましたが、その試みもまた失敗に終わりました。

子女

范縝の子、范胥は長才と名乗り、父の学問を受け継いで太学博士となります。彼もまた優れた弁舌の才を持ち、大同年間には主客郎として東魏の使者を接待する役割を果たしました。また、湘東王蕭繹のもとで平西諮議参軍として、さらに宣城王蕭大器の側で侍読としても活躍しましたが、最終的には鄱陽郡内史として赴任し、郡で生涯を閉じました。

伝記資料

范縝に関する詳細な情報は、『梁書』巻48 列伝第42や『南史』巻57 列伝第47に記録されています。

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