三礼

三礼：儒教礼典の三本柱

儒教において、礼に関する重要な経典として知られる『周礼』『儀礼』『礼記』の三書を総称して三礼と呼びます。これらの書物は、古代中国の社会制度や儀礼、思想を理解する上で欠かせないものであり、後世の儒学にも多大な影響を与えました。

三礼という呼称は、後漢の学者である鄭玄が『周礼』『儀礼』『礼記』の三書を総合的に解釈する学問体系を確立したことにより広まりました。鄭玄以前にも三書はそれぞれ個別に研究されていましたが、鄭玄による体系的な解釈によって、これらが一体として理解されるようになったのです。

『儀礼』：古代の儀礼実践

『儀礼』は、古代中国における具体的な儀礼手順を記した書物です。前漢時代には、『礼』といえば『儀礼』を指すほど、重要な位置を占めていました。現在伝わっている『儀礼』は17篇からなり、前漢の高堂生が伝えた士礼を中心に構成されています。これは「今文儀礼」と呼ばれ、さらに「古文儀礼」と校合されたものが、後漢の鄭玄による注釈と唐の賈公彦による疏注を加えられ、『十三経注疏』に収録されています。

『儀礼』は、冠婚葬祭などの各種儀式における作法や手順を詳細に記述しており、古代中国社会における礼儀作法の規範を示す重要な資料となっています。具体的な行動様式を示す記述を通じて、当時の社会構造や価値観の一端を垣間見ることができるでしょう。

『周礼』：古代中国の官制

『周礼』は、周代の官制や職能について記述された書物です。『漢書・芸文志』には「周官」として記載されており、周王朝における官僚組織の構造や各官職の役割を明らかにしようとしています。前漢の武帝の時代に民間から発見されたとされる古文経であり、天官・地官・春官・夏官・秋官の五官に分類されています。冬官の部分は発見当初から欠落しており、代わりに『考工記』という別の文献が加えられています。現在通行している『周礼』は、『儀礼』と同様に、後漢の鄭玄注、唐の賈公彦疏が付けられて『十三経注疏』に収められています。

『周礼』は、古代中国の政治制度や社会組織を理解する上で貴重な資料です。官僚制の仕組みや職能分担、社会階層などが記述されており、当時の社会構造の複雑さを示しています。また、各官職の具体的な業務内容を知ることで、古代中国における政治運営や社会管理の方法を考察することが可能です。

『礼記』：礼の解釈と実践

『礼記』は、『礼』に関する注釈書であり、戦国時代から漢代にかけての様々な学者の言説を集めたものです。『漢書・芸文志』には「記」141篇と記載されていますが、前漢には「大戴記」と「小戴記」の二つの系統がありました。現在一般的に用いられている『礼記』は49篇からなり、「小戴記」系統に属します。唐代には『五経正義』に取り上げられ、鄭玄注に孔穎達の疏注を加えた『礼記正義』が作成され、『十三経注疏』に収録されています。

『礼記』は、『周礼』や『儀礼』に記された具体的な儀式の内容を解説し、その思想的な背景や社会的な意義を論じています。単なる注釈書にとどまらず、礼の精神や社会秩序の維持、個人の修養など、幅広いテーマが取り上げられており、古代中国における儒教思想の発展過程を理解する上で重要な文献となっています。様々な学者の思想が反映されているため、古代中国の思想史を研究する上でも貴重な資料と言えます。

三礼の総合的な理解

『周礼』『儀礼』『礼記』は、それぞれ異なる側面から古代中国の礼を伝えていますが、三礼として総合的に理解することで、古代中国の社会制度、思想、文化をより深く理解することが可能になります。これらの書物は、単なる歴史資料としてだけでなく、現代社会においても礼儀作法や社会規範を考える上で示唆に富む内容を含んでいます。

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