茅根氏

茅根氏（ちのねし）

茅根氏は、常陸国久慈郡（現在の茨城県）に興った日本の武家氏族です。藤原秀郷を祖とする小野崎氏の庶家にあたり、茅根城を拠点としていました。小野瀬氏も茅根氏から分かれた氏族です。家紋としては、二つ巴、丸に五三桐、丸に違い鷹の羽などが用いられています。

概要

茅根氏は、小野崎氏から最初に分出した氏族であり、本来の小野崎氏族の流れを汲む一族と言えます。代々、茅根城主、次いで大橋城主を世襲し、小野崎氏一門の通字である「通」の字を名前に用いることが慣例でした。また、受領名としては、茅根氏初代の通景が名乗った大和守や尾張守、修理亮などが用いられました。

歴史

茅根氏は、常陸に土着した武士として、守護の佐竹氏や本家の小野崎氏、同じく常陸守護代の江戸氏に仕え、各地で戦功を重ねました。佐竹家臣としては、文亀2年（1502年）に佐竹氏に反抗した山入氏に加担し、討ち死にした茅根九郎三郎が記録に残っています。しかし、その後も茅根氏は佐竹家臣として存続し、佐竹義重の御家門衆や久慈郡西東衆として、茅根兵庫や茅根七郎などの名が見られます。

また、小野崎氏に仕えた茅根氏は、大森氏、瀧氏、天龍氏、石佐氏、波氏、赤須氏などと共に、小野崎通経の家老に列せられました。江戸氏家臣としては、中利員村に260貫を領する部将として茅根内膳が知られています。

佐竹氏の秋田転封に際しては、秋田に同行した者と常陸国に留まった者に分かれました。常陸国に留まった家系からは、後に水戸徳川家に仕官した者や、士分を得ずに神官となった者などがいます。

系譜

茅根氏の系譜には、大きく分けて二つの流れがあります。一つは、家祖である茅根大和守通景の長男、大和守通茂の系統。もう一つは、次男の孫三郎通久の系統です。それぞれの系統から、さらに多くの子孫が分かれています。

主な系譜

小野崎通長 - 茅根大和守通景 - 大和守通茂 - 河内守通利 - 通村
小野崎通長 - 茅根大和守通景 - 孫三郎通久 - 通頼 - 大和守通宗 - 尾張守通吉 - 尾張守、与三郎通康 - 修理亮通基 - 修理亮通滋 - 大和守通親

秋田藩士となった茅根氏の家系には、茅根通正の系統が確認されています。

秋田藩士 茅根氏

茅根通正 - 通忠 - 通重 - 通安 - 靭負通胤

通正流の分家からは、茅根通次の代に佐竹氏の秋田転封に随行し、仙北郡角館に住まう家系が生まれました。

茅根通次流

茅根通次 - 通重 - 季通 - 通宣

水戸藩士となった家系からは、幕末の志士である茅根伊予之介をはじめ、水戸天狗党の乱に従軍した茅根貞贇、茅根次衛門、茅根多門、茅根貞蔵、茅根鎌之介、茅根八十太夫、茅根寅三郎などの志士が輩出されました。

水戸藩士 茅根氏

茅根伊左衛門為俊 - 贈正四位伊予之介泰 - 熊太郎

尊王志士・義民

茅根伊予之介：幕末の水戸藩小姓頭取。徳川斉昭の宥免運動や戊午の密勅に関与し、死罪。贈正四位。靖国神社合祀。
茅根貞贇：宍戸藩士。慶応2年(1866年)獄死。享年18。靖国神社。
茅根次衛門：常陸国那珂郡大宮村の百姓。天狗党に加わり、下野国で捕縛され斬首。
茅根多門：那珂郡村松に在住。吉田社祠官。下総国高岡で獄死。靖国神社合祀。
茅根貞蔵：常陸国久慈郡大和田村の百姓。天狗党の与党として斬首。
* 茅根寅三郎：祐筆。天狗党に加わり死亡。靖国神社合祀。

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