茶臼岳 (栃木県)

茶臼岳（ちゃうすだけ）

茶臼岳は、栃木県那須郡那須町にある標高1,915メートルを測る山で、那須岳の主峰、あるいはその別称として広く知られています。この山は数枚の溶岩流や火砕流、そして山頂部の火砕丘や溶岩円頂丘が積み重なってできた成層火山です。山体は広大な日光国立公園の一部を成しており、その雄大な姿は日本百名山の一つに数えられています。

地理と地質

茶臼岳の火山活動は、およそ1万6千年前から始まりました。特に約1万6千年前には大沢火砕流を噴出し、その後も茶臼岳溶岩の流出や大丸火砕流群の噴出、さらには水蒸気噴火を繰り返しながら成長してきました。15世紀には、山頂火口に形成されていた火砕丘から茶臼溶岩ドームが噴出し、現在の特徴的な山頂部を形成しました。この山は現在も活動を続ける活火山です。

山体は主に溶岩と火砕物が互層をなしており、東西約3キロメートル、南北約1.5キロメートルの範囲に広がっています。噴火口を持つ山頂部は那須町にありますが、その山麓は那須塩原市や福島県西白河郡西郷村にまで及び、那須地域の山々は、まさにこの茶臼岳の裾野の上に成り立っていると言えるでしょう。

自然環境

茶臼岳の山麓は、主に広葉樹林が広がる豊かな植生が見られます。夏には緑が深く、秋には様々な樹木が色づき、美しい紅葉が訪れる人々を魅了します。一方、噴火の影響を受けた山頂付近は、砂礫が広がる荒涼とした景観が特徴です。樹木は少なく、低木が点在するのみですが、そのおかげで見晴らしは非常に良好です。

登山道はよく整備されており、斜面も比較的緩やかなため、初心者や家族連れでも比較的登りやすい山として知られています。ルート上には案内板や目印が多数設置されており、迷う心配も少ないでしょう。主要な登山口である「峠の茶屋」からは、最初は林間の土道を進み、その後は大小の岩石と砂礫が混じる道を登っていきます。峰の茶屋を経て、山頂へ向かうルートは南方向に折れ、そこから一気に標高を稼ぎます。

茶臼岳の東麓からは、那珂川の支流である余笹川や湯川など、数多くの河川が流れています。西麓は那珂川の源流域にあたり、大川などの比較的規模の大きな河川が見られます。西麓の一部には平坦な地形があり、そこには沼原湿原が広がっており、多種多様な湿原植物が自生しています。

山岳信仰と文化

茶臼岳を含む那須岳の山麓に位置する温泉街は、古くから那須連山への山岳信仰における重要な拠点としての役割を果たしてきました。この地域には、狐が化けたとされる九尾の狐の伝説や、毒気を持つとされる殺生石の伝説など、山岳信仰にまつわる多くの逸話が語り継がれています。殺生石の近くにある那須湯本には、那須温泉神社、見立神社、愛宕神社といった複数の神社が鎮座しており、また温泉群にも信仰に由来する名前が付けられています。茶臼岳の山頂には、那須温泉神社の奥宮にあたる那須岳神社が祀られています。また、那須岳登山口には山之神が鎮座しており、登山の安全を見守っています。さらに、茶臼岳の東麓には、高雄神に因む高雄温泉、弁財天に因む弁天温泉、八幡神に因む八幡温泉など、信仰に由来する地名を持つ温泉地が点在しています。

アクセス

茶臼岳の東麓には、栃木県道17号那須高原線（かつてのボルケーノハイウェイ）が整備されており、中腹にある「峠の茶屋」まで自家用車で容易にアクセスできます。峠の茶屋は主要な登山口の一つです。また、峠の茶屋の少し下には那須ロープウェイの那須山麓駅があり、このロープウェイを利用すれば、茶臼岳山頂の近くにある那須山頂駅まで短時間で到達することが可能です。峠の茶屋と那須山麓駅のいずれにも大規模な駐車場が整備されています。公共交通機関を利用する場合、JR東北本線の黒磯駅や那須塩原駅から、春季から秋季にかけて関東自動車の路線バスが那須山麓駅まで運行されており、観光客も比較的気軽に訪れることができます。ただし、アクセスが県道17号線一本に限られていることに加え、峠の茶屋付近でUターンが必要となるため、観光シーズン中は県道17号線が非常に混雑（渋滞）することがあります。

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