茹瑺

茹瑺（じょ じょう）は、生年不詳ながら明代の官僚として歴史に名を刻んだ人物です。彼の生涯は、洪武帝の時代から永楽帝の時代へと、激動の時代を駆け抜けたものでした。

洪武帝時代

茹瑺は監生から身を起こし、承勅郎に任じられた後、通政使へと転じました。その才能は早くから認められ、洪武23年（1390年）には右副都御史に抜擢されます。さらに同年11月には兵部尚書に試用され、翌洪武24年（1391年）には正式に兵部尚書に任命されました。洪武25年（1392年）には太子少保の位も加えられ、その地位は確固たるものとなります。洪武帝の信任を得て、順調な官僚生活を送っていたと言えるでしょう。

建文帝時代

洪武帝の崩御後、建文帝が即位すると、茹瑺は引き続き重用され、洪武31年（1398年）には吏部尚書に任じられます。しかし、黄子澄との不仲が原因で、刑部尚書の暴昭によって不正に財産を隠匿した罪で告発されてしまいます。これにより、茹瑺は官職を解かれ、同年12月には掌河南布政使司事として地方へ左遷されました。建文元年（1399年）11月には南京に呼び戻され、再び兵部尚書に任命されますが、これは彼にとって一時的な復権に過ぎませんでした。

靖難の変と永楽帝即位

建文4年（1402年）6月、燕王朱棣（後の永楽帝）の軍勢が迫ると、建文帝は茹瑺を講和使節として派遣します。しかし、茹瑺は燕王軍に降伏し、土地割譲を条件とした講和を提案しますが、朱棣はこれを拒否しました。南京陥落後、茹瑺は朱棣に召喚され、その即位を勧める先頭に立ちました。永楽帝が即位すると、茹瑺は李景隆・王佐・陳瑄らと共に、即位を推戴した功績によって厚遇されます。同年9月には忠誠伯に封じられ、奉天翊運守正文臣の号を加えられ、兵部尚書兼太子少保の職務を続けます。さらに、子の茹鑑が秦王朱樉の娘である長安郡主の夫に選ばれたことで、茹瑺は郡主の府第の造営にも携わることになります。

失脚と最期

朝廷に戻った茹瑺は、趙王朱高燧を送らなかった罪を問われて故郷に帰されます。しかし、すぐに家人に訴えられて逮捕され、再び都へ護送されることになります。釈放後、故郷に帰る途中、長沙で谷王朱橞に面会しなかったことが問題視され、谷王はこれを永楽帝に報告しました。靖難の変で功績があった谷王の意向を無視できなかった永楽帝は、茹瑺を再び逮捕させます。永楽7年（1409年）2月、陳瑛によって祖制違反を弾劾され、錦衣衛の獄に投獄されました。茹瑺は脱出不可能と悟り、子の茹銓に毒薬を購入させ、自ら服毒してこの世を去りました。彼の著作として『忠誠伯詩集』1巻が残されています。

子女

茹瑺には二人の息子がいました。長男の茹銓は、父の毒殺を幇助したとして罪に問われましたが、父の命令に従ったとして一命を救われ、兄弟家族27人とともに慶遠府河池県へ流罪となります。その後、永楽22年（1424年）に洪熙帝が即位すると釈放され、故郷へ戻りました。次男の茹鑑は、秦王府の長安郡主を娶り、姻戚関係を結びました。

茹瑺の生涯は、激動の明代初期を象徴するものであり、その波乱に満ちた人生は後世に語り継がれています。

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