草場佩川

草場佩川（くさば はいせん）

草場佩川（1787年 - 1867年）は、江戸時代後期の佐賀藩多久領出身の儒学者、漢詩人、文人画家です。その生涯は、学問と芸術に捧げられ、多くの門下生を育て、後世に大きな影響を与えました。

生涯

佩川は天明7年（1787年）に、肥前国多久町で多久氏家臣の次男として生まれました。幼少期に父を亡くしましたが、母から和歌を学び、その才能を開花させました。8歳で東原庠舎に入門し、15歳で句読師補を務めるなど、早くから学才を発揮しました。

文化元年（1804年）、18歳で多久茂鄰の命により佐賀藩校弘道館に入学。古賀穀堂から「珮川」の号を授けられました。文化7年（1810年）には、多久茂鄰に従い江戸に出て古賀精里に師事しました。文化8年（1811年）には、古賀精里に同行して対馬で朝鮮通信使の迎接にあたり、詩文を通じて交流し、その名声を高めました。この時の記録は『津島日記』として残されています。

帰郷後、多久家の儒官として東原庠舎に奉職。天保5年（1834年）には佐賀藩弘道館教諭に就任し、多久家や佐賀本藩の主君の教師として、また藩士の教育に尽力しました。藩主鍋島直正からも信任を受け、政治にも参画しました。

安政2年（1855年）には昌平黌教授への招聘を受けましたが、高齢を理由に辞退。安政6年（1859年）、73歳で弘道館教授に就任。大隈重信、副島種臣、大木喬任、江藤新平など、後に明治維新で活躍する多くの人材を育成しました。

文久元年（1861年）に致仕し、慶応3年（1867年）に81歳で死去しました。長男の草場船山もまた儒学者として知られています。佩川の功績を称え、大正5年（1916年）に従四位が追贈されました。

人物

草場佩川は、漢詩、書、画に優れた文人でした。特に漢詩においては、広瀬旭荘から「真の雅人」と称賛されるほどの才能を発揮しました。また、長崎で江越繍浦に南蘋派の画法を学び、後に南宗画に転じて墨竹画を得意としました。肖像画も多く残しましたが、自画像は現存していません。

佩川は清音に通じ、武芸にも秀でていたと伝えられています。著作として『津島日記』、詩集『珮川詩鈔』などがあり、文化元年以来の膨大な日記『草場珮川日記』は、当時の社会や文化を知る上で貴重な資料となっています。

菅茶山、市河寛斎、頼山陽、篠崎小竹など、多くの文化人と親交を結び、互いに影響を与え合いました。

草場佩川は、学問、芸術、教育を通じて、江戸時代後期の文化に大きな足跡を残した人物として、今もなお高く評価されています。

参考文献

高橋博巳『佐賀偉人伝11　草場佩川』（佐賀県立佐賀城本丸歴史館、2013年） ISBN 978-4-905172-10-9

外部リンク

世界大百科事典 第２版、デジタル版 日本人名大辞典+Plus、大辞林 第三版ほか『草場佩川』 - コトバンク
多久の賢人たち - 公益財団法人孔子の里（多久聖廟）
多久の賢人たち - 多久市立図書館
* 「津島日記」とその関連書 - 佐賀大学電子図書館

もう一度検索