草場良八

草場 良八（くさば りょうはち）

日本の裁判官。第12代最高裁判所長官を務めた（在任：1990年2月20日 - 1995年11月7日）。

概要

草場良八は、1925年（大正14年）11月16日に福岡県に生まれ、2020年（令和2年）3月13日に94歳で逝去した。東京大学法学部政治学科を卒業後、判事補に任官し、裁判官としての道を歩んだ。

経歴

初期は横浜地裁や東京地裁などで刑事裁判官として経験を積んだ。最高裁判所では秘書課長、経理局長を経て、甲府地裁所長、東京高裁判事を歴任。最高裁事務総長時代には、当時の矢口洪一長官を補佐し、簡易裁判所の統廃合や法廷内撮影の部分的な緩和といった司法行政上の課題解決に取り組んだ。その後、東京高等裁判所長官を経て、1989年11月27日に最高裁判所判事に就任した。

最高裁判所長官として

最高裁判事就任から約3ヶ月後の1990年2月20日、第12代最高裁判所長官に就任。「国民から一層信頼される司法の確立に全力を尽くす」と抱負を述べた。司法行政では、前長官の路線を踏襲し、裁判官の外部派遣研修の人員を拡大した。

1992年3月13日には、拘置された被疑者が取調べに際して当番弁護士制度を利用できることを告知するよう、全国の地裁に指示するなど、被疑者の権利保障にも配慮した。

主な担当事件

長官在任中、重要な事件の審理に関わった。代表的なものに、成田新法事件、衆議院議員選挙における一票の格差訴訟（3.18倍の格差を違憲状態と認定）、そしてロッキード事件丸紅ルートの最終審がある。

特に1995年2月22日のロッキード事件丸紅ルート最高裁判決では、裁判長として、事件発生から19年前に行われたアメリカ側証人への嘱託尋問調書について、憲法上の反対尋問権を侵害する可能性を理由にその証拠能力を否定するという、画期的な判断を下した。また、婚外子の相続分差別訴訟なども担当した。

依願退官と後任人事

草場氏は、最高裁判所長官の定年まであと8日となった1995年11月7日に依願退官した。これは日本国憲法下で最高裁判所長官が依願退官した初の事例である。これは、同時期に予定されていた高裁長官会合や、後任長官が円滑に職務を開始できるよう時間的余裕を確保するための配慮であったとされる。

退官に際し、当時の村山富市首相に後任として三好達氏を推薦したところ、首相は「最高裁判所の判断を尊重する」と応じ、草場氏の提案が受け入れられた。この人事については、前長官の矢口氏との間に確執があったとの憶測も流れたが真相は不明である。また、過去の長官人事と比較して、村山首相の判断が政治的に安易であったとの指摘も一部にある。

退官後の活動と考え

退官時の挨拶で、草場氏は「裁判所に必要なのは見識」であり、裁判官が「外の世界で新しいものを吸収して戻ってくる」ことで必要な見識が養われると述べ、外部交流による裁判所活性化の重要性を説いた。

1998年には勲一等旭日桐花大綬章を受章。

2020年3月13日、老衰のため逝去。死没日をもって従二位に叙された。

略歴

1925年11月16日 生まれ
東京大学法学部政治学科卒業
1951年 判事補任官
最高裁判所事務総長、東京高等裁判所長官などを歴任
1989年11月27日 最高裁判所判事 就任
1990年2月20日 最高裁判所長官 就任
1995年11月7日 依願退官
1998年4月29日 勲一等旭日桐花大綬章 受章
* 2020年3月13日 死去

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