荒木田守晨

荒木田守晨（あらきだ の もりあさ）

概要

荒木田守晨は、室町時代に伊勢神宮内宮の祢宜を務めた人物です。俳諧の祖として知られる荒木田守武の兄であり、応仁の乱後の混乱期において、神宮の復興に尽力しました。彼は、仮遷宮の斎行など、重要な役割を果たしましたが、その一方で、人事に関する不祥事が原因で自害するという、波乱に満ちた生涯を送りました。守晨は、神職としての活動だけでなく、和歌や古典研究にも深い関心を持ち、多くの著作を残しています。

生涯

1466年、伊勢神宮内宮祢宜の薗田家、荒木田守秀の五男として生まれました。幼名は長楠。幼少期から権祢宜に任じられ、神宮の祭事に参加しました。外祖父である藤波氏経の寵愛を受け、遷宮の記録や神宮の有職故実、神道書などを学びました。また、僧侶から『日本書紀』や両部[[神道]]書を受容し、幅広い知識を身につけました。

1484年には、細川政元の内宮参拝に奉仕しましたが、後に職を奪われるという経験もしました。1478年に父が亡くなると、喪に服することなく、外祖父の特例を利用して祢宜に就任しました。1495年には五十鈴川の氾濫で被災しましたが、一命を取り留めました。1505年の大火では、弟の守武と共に、御神体を避難させるという活躍を見せました。

1516年、荒木田守則の死後、一祢宜（長官祢宜）に昇進しますが、約束していた人事を履行できなかったことから、わずか数日後に自害しました。辞世の句とされる血書を残しましたが、その意味は判然としていません。在職期間の短さから「六日長官」と揶揄されることもありました。

官歴と遷宮への尽力

応仁の乱以降の戦乱で、伊勢神宮の財政は悪化し、社殿は荒廃していました。守晨は、1479年に風日祈宮遷宮に奉仕した後、1497年に自宅に祢宜らを集め、仮殿の造営と遷宮を計画しました。彼は、過去の記録を参照しながら、遷宮に必要な祭事や儀式を執り行いました。また、1509年には、私財を投じて、忌火屋殿や調御倉などを造営しました。1512年には、仮殿の腐朽を天皇に訴え、遷宮の実現に向けて尽力しました。彼の尽力は、生前に完成を見ませんでしたが、1521年に仮殿遷宮が斎行されました。

学術的業績

守晨は、神職としての活動だけでなく、学問にも熱心でした。彼は、多くの著作を残しており、その中には、遷宮に関する記録や、神宮の有職故実に関するものなどがあります。また、和歌にも才能を発揮し、多くの歌を詠んでいます。彼の著作は、当時の神道や文化を研究する上で、貴重な資料となっています。

主な著述

『文明十一年内宮風日祈宮遷宮記』
『明応六年内宮臨時仮殿遷宮記』
『永正記』
『荒木田守晨引付』
『守則長官引付（内宮永正引付）』
『皇天記』
『守朝長官引付（内宮延徳明応引付）』
「薗田守晨申状案」
『両大神宮雑事勘文』
「荒木田守晨集」
* 『日本書紀』守辰本

和歌

守晨は、宗祇や宗長などの歌人とも交流があり、『新撰菟玖波集』にも歌が選ばれています。また、弟の守武が編纂した『荒木田集』や、守平が編纂した『二根集』にも、多くの歌が収録されています。辞世の句として知られる「風に散るならひは花にいかにせむ何はかなくもしたふ心そ」は、彼の無常観を表していると言えるでしょう。

系譜

守晨の家系は、薗田家として知られています。祖父の守房は薗田家の祖であり、父の守秀は内宮祢宜を務めました。また、弟の守富は藤波氏の養子となり、弟の守武は俳諧の祖として名を残しました。守晨の子供や孫たちは、それぞれ図書家や内匠家、内蔵允家などの家系に繋がっています。

まとめ

荒木田守晨は、室町時代の伊勢神宮において、重要な役割を果たした人物です。応仁の乱後の混乱期に、神宮の復興に尽力しただけでなく、学問や和歌にも才能を発揮しました。彼の生涯は、波乱に満ちたものでしたが、その功績は、後世にまで語り継がれています。

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