荻久保和明

荻久保和明（おぎくぼ かずあき、1953年3月8日 - ）は、日本の作曲家、指揮者であり、合唱音楽の分野で特に重要な貢献をしています。東邦音楽大学の特任教授を務め、後進の指導にも尽力しています。

生い立ちと音楽への道

埼玉県で生まれ育った荻久保は、埼玉県立川越高等学校在学中に音楽部で男声合唱に携わるとともに、ピアノ伴奏も担当していました。この頃、音楽部顧問であった牧野統に師事し、ピアノと作曲の基礎を築きました。牧野は東京音楽学校（現：東京芸術大学）作曲科出身で、NHK全国学校音楽コンクールで輝かしい成績を残した名物教師でした。

高校3年生の時、荻久保は初めての作曲作品として、サトウハチロー作詞の「おかあさん」に曲をつけた男声合唱組曲を作りました。1970年秋に同校音楽部の定期演奏会で披露され、自らピアノ伴奏も務めたこの作品は、将来性への期待を感じさせるとして好評を博しました。

その後、東京芸術大学に進学し、大学院作曲研究科を修了。在学中は、島岡譲、矢代秋雄、間宮芳生、野田暉行といった著名な作曲家に師事し、作曲の研鑽を積みました。また、丸山徹薫、クロイツァー豊子にピアノを師事しました。1976年には、「2つのオーケストラのためのレインダンス」で、第45回毎日音楽コンクール作曲部門第1位を受賞しました。

合唱音楽への情熱

1978年、文化庁芸術祭参加作品として委嘱された混声合唱曲「季節へのまなざし」によって、合唱界での知名度を高めました。この作品は、彼の合唱音楽への情熱を示すものであり、今日においても多くの合唱団によって演奏されています。

荻久保のライフワークの一つとして知られるのが「縄文シリーズ」です。このシリーズは、宗左近の詩に曲をつけたもので、縄文時代の神秘的な世界観を表現しており、彼の合唱作品の中でも特に重要な位置を占めています。

指揮者、教育者としての活動

1987年には、混声合唱団コールクライスを結成し、指導にあたるとともに、数多くの合唱団で客演指揮者を務めています。また、教育活動にも熱心で、多くの優秀な音楽家を育ててきました。弟子の中には、2010年度武満徹作曲賞第2位を受賞した難波研もいます。

多岐にわたる作品群

荻久保の作品は、合唱曲を中心に、管弦楽、室内楽、器楽など多岐にわたります。代表作として、管弦楽曲「霊山院にて」「Cosmos for Orchestra」、吹奏楽曲「カタストロフィー」「栄光の讃歌 -輝けるもののために-」、室内楽曲「黒い典礼（パーカッションアンサンブル）」、ピアノ曲「ピアノソナタ第1番、第2番」「季節への贈りもの」などが挙げられます。

合唱曲では、混声合唱組曲「IN TERRA PAX - 地に平和を」、縄文シリーズ、ミサ曲などが特に知られています。また、「季節へのまなざし」や「ゆうべ、海を見た。」など、多くの合唱曲が広く歌い継がれています。

校歌・団体歌の作曲

荻久保は、校歌や団体歌の作曲にも積極的に取り組んでおり、その数は多数に上ります。

荻久保和明は、作曲家、指揮者、教育者として多方面で活躍し、日本の音楽界に大きな足跡を残しています。彼の作品は、その美しい旋律と深い音楽性によって、多くの人々に感動を与え続けています。

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