莫賀達干 (突騎施)

莫賀達干（バガ・タルカン）

莫賀達干（ばくかたつかん、拼音: Mòhèdágàn、? - 744年）は、8世紀に活躍した突騎施（テュルギシュ、現在のキルギス周辺に存在したテュルク系遊牧民族）の首長です。莫賀達干（バガ・タルカン Baγa Tarqan）は官名であり、彼の本名は記録に残っていません。

生涯

当時の突騎施は、酋長である莫賀達干の部族と都摩度の部族が勢力を二分していました。これらの部族はさらに、黄姓（娑葛の後裔）と黒姓（蘇禄の部族）に分かれ、互いに対立していました。

738年、莫賀達干は夜間に蘇禄を襲撃し、これを殺害しました。都摩度は当初、莫賀達干と共謀していましたが、後に袂を分かち、蘇禄の子である骨啜（クチュル）を擁立して吐火仙可汗（トフシャン・カガン）とし、残りの勢力を集めて莫賀達干を攻撃しました。莫賀達干は、この事態を磧西節度使（唐の西域方面の軍事司令官）の蓋嘉運（がいかうん）に報告しました。これを受け、玄宗皇帝は蓋嘉運に突騎施や抜汗那（現在のフェルガナ地方）などの西方諸国を召集するよう命じました。

一方、都摩度は吐火仙可汗とともに碎葉（スイアブ、現在のキルギス領トクマク付近）城に拠り、黒姓可汗の爾微特勤（イル・テギン）は怛邏斯（タラス、現在のカザフスタン領タラズ）城に拠り、兵を率いて唐に対抗しました。

739年、莫賀達干は蓋嘉運とともに石（チャーチュ、現在のタシケント）王の莫賀咄吐屯（バガテュル・トゥドゥン）と史（ケシュ、現在のシャフリサブス）王の斯謹提（スキンジ）を率いて蘇禄の子を攻撃し、碎葉城でこれを破りました。吐火仙は旗を捨てて逃亡しましたが、賀邏嶺（ガローリン）で捕らえられ、弟の葉護（ヤブグ）頓阿波（トンアパ）も捕えられました。疏勒鎮守使（唐の疏勒鎮の守備隊長）の夫蒙霊詧（ふぼうれいさつ）は精鋭部隊を率いて抜汗那王の阿悉爛達干（アスラン・タルカン）とともに怛邏斯城を急襲し、黒姓可汗とその弟の撥斯（ハス）を斬りました。さらに、曳建城に入り、金河公主（交河公主）と蘇禄の可敦（カトゥン：皇后）、爾微の可敦を捕らえて帰還しました。また、西方諸国に散亡していた数万人を抜汗那王に与え、諸国はすべて唐に降伏しました。処木昆・鼠尼施・弓月らの部族は、これまで突騎施に隷属していましたが、衆を率いて唐に内附し、安西管内への移住を願い出ました。

740年、唐は処木昆匐延都督府の闕律啜（キョリチュル）を右驍衛大将軍に抜擢し、石王に冊立して順義王とし、史王を特進に任命し、その功績を顕彰しました。蓋嘉運は捕らえた吐火仙可汗を太廟に献上し、玄宗は吐火仙を赦免して左金吾衛員外大将軍・修義王とし、弟の頓阿波を右武衛員外将軍としました。また、阿史那懐道の子である阿史那昕（アシナ・キン）を十姓可汗（テュルギシュ可汗）に擁立し、突騎施を統治させようとしましたが、莫賀達干はこれに怒り、「蘇禄を討ったのは私の功績であるのに、なぜ阿史那昕を立てるのか」と反発し、諸部族を誘って反乱を起こしました。そこで玄宗は莫賀達干を可汗に封じ、突騎施の衆を統べさせることを蓋嘉運に伝えさせました。その後、莫賀達干は妻子と纛官（軍旗を管理する役人）、首領を引き連れて唐に降伏しました。

742年、玄宗は再び阿史那昕を十姓可汗に擁立し、兵を派遣して護送させました。しかし、阿史那昕は倶蘭城に至ったところで莫賀達干に殺害されました。その後、突騎施の大纛官である都摩度が唐に降伏し、三姓葉護（ウチュ・ユブグ）に冊立されました。

744年、安西節度使の夫蒙霊詧は莫賀達干を討伐して斬首し、黒姓の伊里底蜜施骨咄禄毘伽（イリテミシュ・クテュルク・ビルゲ）を新たな可汗として擁立することを申請しました。唐は伊里底蜜施骨咄禄毘伽を冊立し、十姓可汗としました。

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