菊池武房

菊池武房（きくち たけふさ）：蒙古襲来で活躍した鎌倉時代の武将

菊池武房は、鎌倉時代中期に活躍した武将で、菊池氏の第10代当主です。父は第9代当主の菊池隆泰であり、その三男として生まれました。特に、蒙古襲来（元寇）における活躍が知られており、その勇猛果敢な戦いぶりは『蒙古襲来絵詞』にも描かれています。

生涯

武房は、文永11年（1274年）の文永の役において、弟の赤星有隆とともに、元軍を迎え撃ちました。元軍は博多湾に上陸し、赤坂まで進出しましたが、菊池武房率いる菊池勢は、これを打ち破り、元軍の主力を麁原（そはら）へ、一部を別府（べふ）の塚原まで撃退するという大戦果を挙げました。この戦いでは、菊池勢100余騎が元兵の首を多数携えて帰陣したと伝えられており、その武勇が窺えます（赤坂の戦い）。

また、文永10年（1273年）5月には、執権と連署を務めた北条政村が死去した際、政村の甥で娘婿にあたる北条実時に対し、弔意を表する書状を送っています。その中で、異国（元）の事態により、鎮西の地頭御家人は参向できないという幕府の指示があるため、弔問に伺えないことを残念に思うと述べています。この書状からは、当時の緊迫した情勢と、武房の律儀な人柄が伺えます。

弘安4年（1281年）の弘安の役においても、武房は再び元軍と戦い、武功を挙げました。しかし、朝廷からは甲冑を賜ったものの、幕府からは十分な恩賞が与えられなかったため、武房は幕府に対して不満を募らせ、反幕府的な姿勢を強めていったと言われています。これらの不遇は、後の武房の行動に影響を与えた可能性があります。

弘安8年（1285年）3月26日、武房は41歳でこの世を去りました。彼の死後、菊池氏の家督は孫の菊池時隆が継ぐことになりました。

大正4年（1915年）11月10日、その功績を讃えられ、従三位が贈られました。

菊池武房の人物像

菊池武房は、武勇に優れるだけでなく、礼儀を重んじる人物であったと推察されます。蒙古襲来という未曾有の危機の中、一族を率いて勇敢に戦い、敵を撃退した功績は、後世に語り継がれるべきものです。一方で、幕府からの冷遇が、武房を反幕府へと傾倒させたという事実も、当時の武士の複雑な心情を表していると言えるでしょう。

関連事項

元寇：文永の役と弘安の役を含めた、元軍による日本侵攻事件を指します。菊池武房はこの戦いで重要な役割を果たしました。

脚注

『蒙古襲来絵詞』：文永の役と弘安の役の様子を描いた絵巻物です。菊池武房の活躍も描かれています。

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