華吹大作

記録ずくめの鉄人力士、華吹 大作

元大相撲力士の華吹 大作（はなかぜ だいさく、本名：山口 大作）は、1970年5月28日に東京都足立区で生を受け、立浪部屋に所属した。最高位は東三段目18枚目（2003年11月場所）。約36年にも及ぶ前例のない長い現役生活を通して、相撲史にその名を刻んだ人物である。

半生を土俵と共に

1986年3月場所で初土俵を踏んだ華吹は、当時の師匠である7代立浪（元小結 旭豊）よりも一年早く角界に入った。入門直後に番付外に転落する経験もしたが、すぐに復帰を果たし、改修後の大阪府立体育会館で初めて相撲を取り、勝ち名乗り一番乗りとなった。

その後は序二段を主戦場としつつ、1994年9月場所で初土俵から8年を経て三段目へ昇進。現役引退までのキャリアを通じて、序二段と三段目の間を行き来する生活が続き、実に19回もの序二段から三段目への昇進を経験している。

2003年9月場所では自己最高の三段目74枚目で6連勝を果たし、あと一番で幕下昇進や三段目優勝の可能性もあったが惜敗。続く11月場所で最高位を更新するも全敗に終わり、これが最終的な自身の最高位となった。

相次ぐ「高齢記録」の樹立

2011年5月場所で当時の最年長力士だった栃天晃が引退すると、華吹がその座を受け継いだ。ここから彼の「高齢記録」への挑戦が始まる。2015年7月場所には栃天晃の現役在位記録に並び、2017年5月場所には単独1位となる史上最長の在位場所数を記録した。また、最高位が三段目以下の力士としては、力士褒賞金の史上最高額も更新している。

30代後半以降は再び序二段での在位が多くなるものの、45歳11ヶ月で迎えた2016年5月場所では勝ち越し、昭和以降最高齢での三段目復帰を果たした。2017年3月場所では負け越し寸前から巻き返し、約5分に及ぶ一番を取り直しの末に制して逆転勝ち越しを決めるなど、衰えぬ勝負強さも見せた。

2017年5月場所の千秋楽、47歳の誕生日に「昭和以降の最高齢力士」となり、その記録を更新し続けた。さらに2019年5月場所には、約31年ぶりに序ノ口に陥落。しかし、この場所に出場したことで「昭和、平成、令和」の三時代に本場所で相撲を取った唯一の力士という、歴史的な偉業を達成した。

極めつけは2020年5月28日、満50歳での現役続行。これは昭和以降初のことで、現役力士の50歳到達は実に115年ぶりと大きな話題を呼んだ。50代となっても土俵に上がり、白星を挙げたり（112年ぶり）、本場所皆勤（114年ぶり）、さらには勝ち越し（116年ぶり）まで達成するなど、常識を覆す活躍を見せた。

引退、そして第二の人生へ

記録的な高齢での現役続行の背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、引退後の計画に遅れが生じた事情もあったとされる。しかしその間にも、通算勝利数で元横綱朝青龍や元横綱輪島といった名力士を上回る記録を樹立している。

2022年1月場所を最後に、51歳7ヶ月でついに土俵に別れを告げた。華吹の引退は、昭和時代に入門した力士が角界からいなくなることを意味し、一つの時代の区切りとなった。

引退後は、自身の四股名にちなんだ飲食店を神戸市で経営する傍ら、後援者との縁で広島県のタクシー会社に勤務するなど、第二の人生を歩んでいる。

人柄とエピソード

華吹は所属部屋で長年ちゃんこ番を務め、若い力士たちの面倒見も良かった。特に料理の腕前は評価が高く、関係者からは「絶品」と称されるちゃんこ鍋を作ることで知られていた。

現役晩年には満身創痍の状態も伝えられたが、本場所の土俵に上がるためのトレーニングは欠かさず行っていたという。約36年の現役生活での休場はわずか13日と、その心身の強靭さを示す。高齢での勝ち越しは、長年の経験に加え、ちゃんこ長としての忙しさから元々稽古時間が限られていたため、コロナ禍による周囲の稽古量減少で差が縮まった、といった分析も聞かれた。

入門前は習い事が長続きしなかったと語る一方、憧れの千代の富士のように上手投げを得意としたとも報じられている。また、力士は車の運転が禁止されているため、25年間にわたりペーパードライバーだったというエピソードも。控えめな性格で、幕下以下の力士への取材が増えた時代にあっても、記者への対応は極力避けていたという。意外な一面として、宝塚歌劇団の熱心なファンだったことでも知られている。

主な記録

通算在位場所数：214場所（史上単独1位）
序二段から三段目の昇進回数：19回
昭和以降の最高齢現役力士（51歳7ヶ月での引退）
昭和、平成、令和の三時代に本場所で相撲を取った唯一の力士

数々の前人未踏の記録を打ち立てた華吹大作は、大相撲の歴史に確かな足跡を残した異色の力士と言えるだろう。

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