萱野志朗

萱野 志朗

萱野 志朗（かやの しろう、1958年4月14日 - ）は、日本の政治家であり、アイヌ民族の権利向上を目指す活動家です。北海道沙流郡平取町二風谷で、アイヌ文化の復興に尽力し、後に参議院議員を務めた萱野茂氏の次男として誕生しました。母親はれい子氏です。

生い立ちと初期のキャリア

1958年に北海道平取町二風谷に生まれた萱野氏は、亜細亜大学法学部で学び、1981年に卒業しました。大学卒業後は、大手広告会社での勤務を経験しました。故郷である平取町に戻った後は、アイヌ文化に関わる活動を開始。1988年からは、平取町二風谷にあるアイヌ語教室で事務局員を務め、アイヌ語の振興に携わりました。また、1990年には佛教大学の通信教育課程で学芸員の資格を取得しています。

資料館活動と政治活動への関わり

1992年より、父・萱野茂氏が設立した萱野茂二風谷アイヌ資料館の副館長、学芸員として活動の場を広げました。資料館ではアイヌ文化に関する資料の収集、保存、展示、研究に従事し、文化伝承の一翼を担いました。1994年から1998年にかけては、父である萱野茂氏が参議院議員を務めていた期間、公設第二秘書として国政の場でその活動を支えました。父の引退後、1998年の参議院議員選挙（北海道選挙区）に社民党公認の新人として立候補しましたが、惜しくも当選には至りませんでした。

2006年からは萱野茂二風谷アイヌ資料館の館長に就任し、現在も務めています。また、同年には萱野観光株式会社を設立し、北海道登別市にある「のぼりべつクマ牧場」に隣接する施設「ユーカラの里」の実現にも貢献しました。地元平取町においては、2019年の町議会議員選挙で無投票により当選し、一期務めましたが、2023年に退任しています。

アイヌ民族党の設立と活動

萱野氏の活動の中でも特筆されるのが、アイヌ民族による政治参加を目指した政党の設立です。2011年、アイヌ民族党の結成準備会発起人代表を務め、翌2012年1月に江別市で開催された結党大会で、初代党首に就任しました。党大会には約200人が参加し、副代表にはアイヌウタリ連絡会代表の宇梶静江氏らが選出されました。結党にあたっては、ニュージーランドのマオリ党議員や、世界各国の先住民族団体から祝福のメッセージが寄せられるなど、国内外からの注目を集めました。

アイヌ民族党は、当初2013年の参議院議員選挙での候補者擁立を目指していましたが、資金難などを理由に断念しています。また、2012年の衆議院議員総選挙では北海道第9区に候補者を擁立しましたが、当選には至りませんでした。困難もありましたが、党組織は現在も存続し、定期的に党大会を開催するなど活動を続けています。

アイヌ民族党の基本理念と政策

アイヌ民族党が掲げる基本理念は、アイヌ民族の権利回復と教育・福祉の充実、多文化・多民族共生社会の実現、そして自然と共生する持続可能な社会の実現です。これらを実現するための具体的な政策として、以下のような項目を掲げています。

「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に基づいた権利の法制化
アイヌ語の公用語化の推進
「アイヌ民族庁」やアイヌ民族の公的代表機関の設置
アイヌに関する幼稚園から大学までの教育機関の設立
北方領土問題の返還交渉にアイヌ民族が参加すること
伝統的な食文化に必要な範囲でのサケやクジラの捕獲権の回復
アイヌ民族の文化や習慣に配慮した高齢者施設の設置
永住外国人への地方参政権付与
外国人学校や民族学校への支援
再生可能エネルギーの利用促進と脱原子力発電
* 環太平洋戦略的経済連携協定（TPP）への不参加

萱野志朗氏は、資料館運営を通じた文化伝承、そしてアイヌ民族党党首としての政治活動を通じて、アイヌ民族の尊厳回復と権利確立、そして多様性が尊重される社会の実現を目指し、多角的なアプローチで活動を続けています。

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