落部駅

落部駅

落部駅（おとしべえき）は、北海道二海郡八雲町落部にある北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線の駅です。駅番号はH57、電報略号はオヘが用いられています。

歴史

この駅の開業には、やや特異な経緯があります。

1903年、北海道鉄道が森駅と熱郛駅の間を開業させる計画を進めた際、現在の落部地区にあたる落部村付近にも駅を設けることが検討されました。しかし、当時の村では、駅ができると旅人が村を素通りするようになり、宿場町として栄えてきた商業が衰退するのではないか、という懸念から駅の設置に反対したと伝えられています。このため、当初は落部への駅設置は見送られました。

状況が一変したのは1907年のことです。宮内省御料局が落部御料林での伐採と、官有地約300町歩（およそ3平方キロメートル）の解放を発表すると、伐採された材木や解放地への入植者によって生産される物資の輸送手段が不可欠となりました。これを受けて、地元から落部駅の設置を求める強い請願運動が起こり、ようやく駅が設置される運びとなりました。

こうして、落部駅は1911年8月5日に国有鉄道函館本線の一般駅として開業しました。開業当初、駅は現在の国道5号線のルート付近、現在の駅位置から海側へ約200メートルほど離れた場所に設置されていました。

第二次世界大戦中の1945年7月20日、当駅を含む石倉駅 - 野田追駅（現在の野田生駅）間が複線化されることになりました。これは、当時の輸送力増強が目的でした。特にこの区間は、最大16パーミル（1000メートル進む間に16メートル高くなる）という鉄道としては比較的急な勾配があり、線形も複雑だったため、より勾配の緩やかな新しい線路への切り替えと複線化が進められていました。新しい線路は複線として計画され、路盤やトンネルはほぼ完成していましたが、当駅と野田追駅の間にあるトンネルの工事が片側一本分しか完成していなかったため、暫定的に上り線のみが新しい線路に移転し、上下線で異なる線路を使用する形で複線運転を開始しました。

この線路切り替えに伴い、駅の位置も山側へ約200メートル移動させる計画がありましたが、上り線だけが先に新線に移った結果、下り線が引き続き使用する旧線上のホームと、上り線用の新線上のホームの位置が約200メートルも離れてしまう事態となりました。このため、利用者の混乱を避けるため、一時的に6人から7人もの駅助役を配置して対応しました。しかし、複線化工事は同年8月15日の終戦とその後の混乱により中断され、この不便な状態がしばらく続くことになります。

同年10月には、駅舎の本屋が新しい線路側、すなわち現在の位置に移転しました。

1949年6月1日には、日本国有鉄道法が施行されたことに伴い、日本国有鉄道（国鉄）の駅となりました。

戦後になり、工事は再開されます。1958年12月10日、石倉駅と落部駅の間の新しい線路が複線として完成し、それまで下り線が使用していた旧線は廃止されました。これに合わせて、落部駅の下りホームも現在地に移転・統合され、ホーム間の位置ずれは解消されました。しかし、落部駅から野田追駅の間は、新しい線路の上り線側のみを使用して単線として運用される形に変更されました。

その後、1968年9月21日に落部駅と野田生駅の間も再び複線化が完成しました。

鉄道貨物の取り扱いは1980年5月1日に、鉄道小荷物の取り扱いは1984年2月1日にそれぞれ廃止され、旅客専用の駅となりました。

旅客営業においては、1981年10月1日のダイヤ改正で急行列車が停車するようになりますが、1984年2月1日の急行「せたな」の快速列車化に伴い、優等列車の停車はなくなりました。1986年11月1日には駅員配置がなくなり無人化され、簡易委託駅となりました。1987年3月16日の瀬棚線廃止に伴い快速「せたな」も廃止されましたが、代替として快速「アイリス」が設定されました。

1987年4月1日には国鉄分割民営化により、北海道旅客鉄道（JR北海道）の駅として新たなスタートを切りました。

駅舎は1991年12月に改築されています。

2007年10月1日からは駅ナンバリングが導入され、「H57」の番号が付与されました。簡易委託による乗車券販売は2019年9月30日で終了し、現在は完全な無人駅として運営されており、八雲駅が管理しています。

駅名の由来

駅名は、所在地である落部という地名に由来しています。この地名はアイヌ語の「オテㇱペッ（川尻・梁・川）」や、「オテㇱウンペッ（川尻・梁・ある・川）」、「オテㇱウンペ（川尻・梁・ある・処）」といった言葉に由来すると考えられています。これらの言葉に含まれる「テㇱ（tes）」は「梁（やな）」を意味し、かつてアイヌの人々がサケ漁のために梁を設置していた場所であったことから名付けられたとされています。

駅構造

落部駅は、カーブした線形上に、島式ホームと相対式ホームを組み合わせた2面3線の地上駅として配置されています。ホーム同士は駅中央にある構内踏切で連絡しています。3番線は下り列車の待避線として使用されることがあります。駅舎は木造です。

かつて、札幌へ向かう寝台特急「北斗星」が3番線に運転停車し、その後から函館駅を出発した特急「スーパー北斗1号」が2番線を通過するという形で、特急列車同士の追い越しが行われていました。しかし、2014年3月のダイヤ改正で「スーパー北斗1号」の函館駅発車時刻が早まったため、この駅での追い越しは行われなくなりました。

利用状況

（過去の乗車人員推移に関するデータが示されていましたが、具体的な数値の記載はありませんでした。）

駅周辺

駅周辺には、主要幹線である国道5号線が通り、道央自動車道の落部インターチェンジも比較的近くにあります。また、八雲町役場の落部支所や警察駐在所、郵便局、農業協同組合や漁業協同組合の支店など、地域の生活を支える施設があります。教育施設としては八雲町立落部小学校や落部中学校が、その他、落部川や落部橋、落部公園、上の湯温泉といった自然や憩いの場も見られます。函館バスの「落部駅前」停留所も設けられています。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線
石倉駅 (H58) - 落部駅 (H57) - 野田生駅 (H56)

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