葛原猪平

葛原 猪平: 冷凍物流事業の先駆者

葛原猪平（くずはら いへい）は、1879年（明治12年）12月22日、山口県吉敷郡小郡町上郷に生まれた実業家である。彼は冷凍物流事業の草分けとして日本の食文化に深い足跡を残した。彼の生涯は、商業、電気事業、さらには政界への挑戦を経て、多くの影響を与えながら劇的に展開した。

幼少期と学び

猪平は、父の葛原富次郎の二男として育ち、1897年に旧制・高等商業学校に入学する。彼は海外の実業に目を向け、1900年には農商務省の海外実業練習生に選ばれ、アメリカに渡った。

アメリカではペンシルベニア大学やウィスコンシン大学で商業や経済を学び、さらにコロンビア大学では政治経済学を専攻した。1905年にはニューヨークの貿易会社に勤務する中、日本支部と支那支部の主任を歴任し、重要な経験を積んだ。

日本戻りと貿易事業

1909年に猪平は東京に戻り、自身の貿易会社、葛原商会を設立。輸出業務では紙類を扱い、南米やオーストラリアとの販路を開拓した。また、機械類の輸入にも従事し、特に冷蔵庫に注力した。1911年には太平洋電気会社を設立し、1914年には山陽電気株式会社を設立。しかし彼は1917年に電気事業を手放し、冷蔵事業に専念する決断を下した。

冷凍物流事業の確立

1917年、猪平は再びアメリカに渡る。第一次世界大戦の影響で食糧問題を目の当たりにし、日本も類似の事態に陥ると予測。豊富な海産物の冷凍保存がその解決策になると考え、冷凍技術者を伴って帰国。1920年には伊豆の伊東に設備を整え、鮮魚の冷凍保存の実験を開始。

この試みは次第に実を結び、北海道や宮城県にも冷蔵庫を設置し、1921年には東京へ大量の冷凍魚を出荷。彼は日本各地で冷蔵庫の建設に取り組み、冷蔵運搬船も導入した。

経営の困難と政界進出

しかし、事業は順調とは言えず、1925年には葛原冷蔵が破綻。猪平は社長を辞任し、その後再付けられた東洋冷蔵株式会社も経営に苦しむこととなった。

1928年、48歳の時に立憲政友会から衆議院議員に当選。フィリピンでの電力事業の視察も行ったが、投資家が見つからず断念。1930年には政界を離れ、故郷の山口へ戻り、果樹園を経営し静かな生活を送ることとなった。

最後の日々と影響

1942年1月15日、葛原猪平は62歳で亡くなるが、その企業の創業は日本の水産物流通に大きな影響を与えた。経営の失敗はあったものの、彼の試みは後の世代の起業家たちに道を開くものであった。彼の妻足子は飛行家滋野清武男爵の妹であり、家庭も充実したものであった。

猪平はまた、野口英世との友好関係も知られており、彼の情熱と貢献は日本の冷凍物流の歴史に大きな足跡を残した。

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