董扶

董扶について

董扶（とう ふ、生没年不詳）は、中国後漢末期に活躍した官僚です。彼の字は茂安で、益州広漢郡の綿竹県に生まれました。彼に関する記録は『後漢書』の方術伝に残されています。

生涯の初期と学問の追求

若い頃から、董扶は学問に対する熱意を持ち続けました。彼はさまざまな儒学の経典、特に『欧陽尚書』を学び、また同郷の優れた学者である楊厚に師事しました。彼の研究仲間には、任安という同門の学者もいました。この時期に、董扶は図讖と呼ばれる卜占の技術も学びました。

さらに、董扶は洛陽の太学に遊学し、帰郷後は多くの弟子に講義を行うようになりました。彼の元には、遠方からも学びに訪れる者が多く、教えを請う人々にとって董扶は賢明な指導者であったと言えるでしょう。

政治的キャリアと影響力

永康元年、つまり167年に、日食が起こりました。この時、賢良・方正な士を推薦するようにとの詔が出され、董扶も左馮翊の趙謙に推挙されました。しかし、彼は病を理由にその申し出を断るなど、仕官の誘いを度々拒んでいました。

霊帝の治世に入ると、何進からの招聘を受け、董扶は宮中に入ることとなり、侍中に任命されました。朝廷内では儒宗と称され、重用されました。劉焉が朝廷の混乱を避けることを考え、交阯へ行くことを希望した際、董扶は彼に対し「益州には天子の気がある」と進言しました。これを聞いた劉焉は、益州牧に任命されることを強く望み、その期待は実現します。

その後、董扶は蜀郡の都尉に任じられ、劉焉と共に故郷への帰還を果たしました。しかし、彼の活動はそれほど長くは持続しませんでした。霊帝が崩御した後には天下が混乱し、董扶は官を辞して隠居生活に入ります。82歳での死去と記録されており、彼の人生の晩年には多くの人々が彼に感謝し、尊敬の念を抱いていました。

董扶の評価と政府内での地位

益州における董扶の能力は並ぶ者がないほど、彼は討論に非常に強い人物として知られていました。彼の口から出る議論は鋭く、多くの人々が彼と話すことで議論が終わってしまうことから「致止」と称されることもありました。彼の長所を知る者たちも多く、特に諸葛亮に尋ねられた際には、秦宓が「董扶は些細な善でさえ褒め称え、些細な悪は厳しく非難する」と評価しました。

このように、董扶はその知識、孤高の存在感、及び学問に対する真摯な姿勢で数世代にわたり影響を与えた官僚であったことがわかります。

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