葬式の名人

『葬式の名人』は、2019年に公開された日本の映画です。大阪府茨木市の市制70周年記念事業として制作され、同市が全面的に協力しています。監督は樋口尚文、脚本は大野裕之が務め、主演は前田敦子が務めました。

概要

この映画は、川端康成の短編『葬式の名人』を原案とし、『師の棺を肩に』や『片腕』など、川端の他の作品からも着想を得たファンタジックコメディです。制作費の一部はクラウドファンディングで調達され、目標額を大幅に上回る1,661万円が集まりました。川端康成自身も18歳まで茨木市で生活しており、プロデューサー兼脚本の大野裕之とともに、茨木市内の大阪府立茨木高校の卒業生であるという縁も、この作品に深みを与えています。

ストーリー

物語は、幼い頃に両親と祖父を亡くし「葬式の名人」と呼ばれる雪子と、彼女をいつも気遣う同級生の創を中心に展開します。創は茨木高校野球部のエースでしたが、怪我で野球を諦め、絵を描き始めます。雪子は創との間に子供を授かりますが、二人は別れ、創はアメリカへ旅立ちます。息子には、父親はメジャーリーガーになったと伝えています。

数年後、アメリカから帰国した創は、母校の前で交通事故に遭い亡くなってしまいます。葬儀場がなかなか決まらない中、同級生たちは棺を担ぎ、創を思い出の母校へ連れて行くことを決意します。学校では体育祭の準備が進む中、食堂でお経が読まれ、雪子は息子に父親の死を伝えます。

夜になり、野球部の部室で通夜が行われ、同級生たちは昔話に花を咲かせます。「創と回る夜の茨高ツアー」と題し、棺を担いで校内を練り歩くうちに、棺の中に僧侶が寝ていることに気づきます。創の遺体はどこへ？ 混乱の中、雪子の息子が行方不明になりますが、最後は創の遺体のそばで眠っているところを発見されます。

深夜、白い光を放つ老女が現れ、自分の右腕を切り落とし、それを創の右腕と付け替えます。すると、腕が治った創が現れ、息子にメジャーリーグのボールを渡します。その後、創はどこかへ走り去ってしまいます。

朝、雪子と息子が目を覚ますと、創の遺体のそばで眠っていました。同級生たちは、創が残した漫画の原稿を見つけ、そこに描かれた高校時代の雪子、創、そして息子の姿に感動します。同級生たちは「友の棺を肩に」母校を後にし、雪子は「大切な人を送ると、また新しい出会いがある」とつぶやきます。そして、息子のポケットには、メジャーリーグのボールが入っていました。

キャスト

渡辺雪子 - 前田敦子
豊川大輔 - 高良健吾
吉田創 - 白洲迅
緒方慎吾 - 尾上寛之
竹内みさ - 中西美帆
島村範男 - 奥野瑛太
島村ゆう - 佐藤都輝子
大森奈都 - 樋井明日香
岩日京子 - 中江有里
奥村郁子 - 大島葉子
小畑典子 - 佐伯日菜子
渡辺あきお (雪子の子供) - 阿比留照太
吉田栄吉 - 堀内正美
吉田葉子 - 和泉ちぬ
葬儀屋 - 桂雀々
組長 - 中島貞夫
若頭 - 福本清三
僧侶 - 栗塚旭
謎の女 - 有馬稲子

スタッフ

監督 - 樋口尚文
原案 - 川端康成
企画 - 榎望
プロデューサー、脚本 - 大野裕之
撮影 - 中堀正夫
照明 - 祷宮信
美術 - 部谷京子
音楽 - 上野耕路
編集 - 大島ともよ
音楽プロデューサー - 佐々木次彦
劇中マンガ - やまだないと
VFX - オダイッセイ
特殊造型 - 原口智生


『葬式の名人』は、茨木市という特定の場所を舞台に、死と再生、過去と未来が交錯する独特の世界観を描いた作品です。川端康成の文学的な香りを残しつつ、ファンタジーとコメディの要素を巧みに融合させており、観る者を魅了します。

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