蒔田城

蒔田城の概要

蒔田城は、神奈川県横浜市南区蒔田町に位置していたとされる日本の城です。現在、学校法人横浜英和学院が所在する場所、具体的には大岡川右岸の標高約35メートルの台地上に築かれていたと考えられています。学院の敷地内が本曲輪であった可能性が高く、城の中心部があったと推測されています。しかし、大正時代に学院が建設された際に、主要な遺構は削平されてしまった可能性が高いです。それでも、周辺には空堀や腰曲輪と思われる地形が残っており、かつての城の姿をわずかに偲ぶことができます。

蒔田の吉良氏

蒔田城を語る上で欠かせないのが、この地を治めた吉良氏です。吉良氏は足利将軍家の分家にあたり、その家格は非常に高く、「御所（足利）が絶えれば吉良が継ぎ、吉良が絶えれば今川が継ぐ」と言われるほどでした。吉良氏は世田谷城を拠点としていましたが、軍事的には強大化せず、戦国時代には後北条氏の勢力下に入りました。興味深いのは、吉良氏の所領が『小田原衆所領役帳』には見られない点です。彼らは独自の判物を発給していたことから、後北条氏の支配下にあっても、特別な地位を保っていたと考えられます。蒔田城の築城年代は不明ですが、15世紀末頃には吉良成高、あるいは吉良頼康の代には蒔田の地を領有し、「蒔田御所」と呼ばれていたと伝えられています。

吉良氏の菩提寺と供養塔

蒔田城跡の東南麓には、龍祥山勝國寺という寺があります。この寺は吉良氏の菩提寺とされており、境内には4基の五輪塔が「吉良家の供養塔」として横浜市の地域史跡に登録されています。これらの供養塔は、吉良氏の歴史とこの地との繋がりを今に伝える貴重な遺産です。

成美学園遺跡の発掘調査

興味深いことに、横浜英和学院の前身である成美学園時代の1984年、グラウンド整備に伴い校庭の一部で発掘調査が行われました。この調査では、縄文時代前期、弥生時代、古墳時代の竪穴建物跡など、古代の集落跡が発見されました。しかし、残念ながら、城郭関連の遺構は確認されませんでした。ただし、中世の遺物として火鉢片が1点出土しており、中世におけるこの場所の利用を示す手がかりとなっています。この発掘調査は、蒔田城の歴史を解き明かす上で、重要な手がかりを与えてくれるかもしれません。

まとめ

蒔田城は、その正確な築城年代や規模は不明な点が多いものの、吉良氏という名門の歴史と深く結びついた城郭です。現在の学院敷地内ということもあり、遺構は多くが失われてしまいましたが、周辺に残る地形や供養塔から、かつての城の姿を想像することができます。発掘調査の結果から、この地が古代から重要な場所であったことが分かり、城郭だけでなく、歴史的な視点からも興味深い場所であると言えるでしょう。蒔田城は、歴史のロマンを感じさせてくれる場所です。

参考文献

横浜市歴史博物館 2014『蒔田の吉良氏－戦国まぼろしの蒔田城と姫君－』横浜市ふるさと歴史財団

関連項目

吉良氏
* 吉良頼康

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