蒔田広孝

蒔田広孝：激動の時代を生きた備中国浅尾藩主

蒔田広孝は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した、備中国浅尾藩の藩主です。旗本から大名への華々しい昇進、戊辰戦争への参加、そして地方行政における貢献と、波乱に満ちた生涯を送りました。本稿では、彼の生涯を詳細にたどり、その足跡を辿ります。

華麗なる出自と出世

嘉永2年（1849年）、蒔田広孝は旗本・蒔田広袢の嫡男として誕生しました。幼少期から優れた素質を見せ、安政4年（1857年）には寄合旗本・蒔田広運の養子となり、安政5年（1858年）には家督を相続します。その後、文久3年（1863年）には将軍徳川家茂に拝謁し、同年、江戸市中警護の功績により1万石の大名に昇進。菊の間詰めの定府大名として、幕府の中枢で活躍するようになります。元治元年（1864年）には従五位下・相模守に叙任され、さらに同年に京都見廻役に就任。200人の兵を率いて京都の警備を担い、禁門の変においては重要な役割を果たしました。

試練と決断

慶応元年（1865年）には長州征伐への従軍を願い出ましたが、認められませんでした。しかし、彼の幕府への忠誠心は揺るぎないものでした。慶応2年（1866年）、浅尾陣屋は長州浪士の襲撃を受け、灰燼に帰すという大きな危機に見舞われます（倉敷浅尾騒動）。この事件を受け、一時的に帰藩を許可されることになります。慶応3年（1868年）には京都見廻役を退任。慶応4年（1868年）には上洛し、恭順の姿勢を示すと、備中国内の旧幕領の管理を命じられました。戊辰戦争では新政府に与し、岡山藩と共に戦いました。

明治新政府と地方行政への貢献

明治2年（1869年）の版籍奉還により知藩事となり、明治4年（1871年）の廃藩置県で免官となるまで、藩主として手腕を発揮しました。その後は東京に移り、明治14年には秋田県御用掛、同年に秋田県由利郡長に就任。地方行政に貢献していくことになります。明治17年（1884年）には子爵に叙せられ、その功績が認められました。晩年には、地方自治に積極的に関わり、明治30年（1897年）には浅尾村長、明治41年（1908年）には総社町長に就任。地方社会の発展に尽力しました。大正7年（1918年）、70歳で生涯を終えました。

まとめ

蒔田広孝は、激動の時代を生き抜き、旗本から大名へと昇りつめ、戊辰戦争にも参加した稀有な人物です。その後は地方行政に貢献し、子爵に叙せられるなど、数々の功績を残しました。彼の生涯は、日本の近代化への移行期における、武士階級の変遷と適応を象徴するものであり、貴重な歴史的遺産と言えるでしょう。彼の功績は、今日にまで語り継がれるべきものです。

もう一度検索