蕪村妖怪絵巻

蕪村妖怪絵巻

『蕪村妖怪絵巻』は、江戸時代中期の俳人・画家として知られる与謝蕪村によって描かれた日本の妖怪絵巻です。残念ながら現物は所在不明となっていますが、昭和3年（1928年）に北田紫水文庫から刊行された復刻版を通じて、その内容を知ることができます。

概要

この絵巻は、蕪村が京都府宮津市の見性寺に滞在していた頃、その欄間に張られていたと伝えられています。このことから、宝暦4年から7年（1754年-1757年）にかけて蕪村が丹後国宮津（現在の京都府宮津市）で絵の修行をしていた時期に描かれたものと考えられています。

絵巻の劣化を懸念した宮津町の俳人・黒田芝英が絵巻を入手し、その後、俳諧関係の資料を豊富に所蔵していた北田紫水文庫へと移されました。しかし、その後の所蔵者は分かっていません。

蕪村による妖怪の絵は、先行する各流派の妖怪絵巻を意識しつつも、俳画ならではの柔らかな筆致でユーモラスに描かれている点が特徴です。例えば、銀杏の化物が墨染めの着物を着て鉦を叩く様子は、大津絵の画題の一つである「鬼の寒念仏」の構図を下敷きにしているのではないか、という見方もあります。

淡彩で描かれた全8点の妖怪は、単に妖怪の絵と名称を紹介するだけでなく、その妖怪にまつわる物語を綴ったものも含まれています。蕪村が日本各地を旅していた時期に、各地で耳にした妖怪譚を描いたものと推測されています。

しかし、『新花摘』（1797年）などで体験として何度か記している狐や狸についての絵が一点も見られないなど、絵巻の内容を裏付ける資料は乏しいのが現状です。

作品一覧

関連項目

土佐お化け草紙
怪奇談絵詞

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