妖怪絵巻

妖怪絵巻とは

妖怪絵巻とは、日本に伝わる妖怪を主題として描かれた絵巻物の総称です。平安時代から江戸時代にかけて、様々な種類の妖怪絵巻が制作されました。これらの絵巻は、当時の人々の妖怪に対するイメージや信仰を視覚的に表現した貴重な資料であり、日本の妖怪文化を研究する上で欠かせない存在となっています。

妖怪絵巻の種類

妖怪絵巻は、大きく分けて以下の3つの種類に分類することができます。

物語絵巻: 妖怪が登場する物語や特定の場面を描いた絵巻です。『付喪神絵巻』や『百鬼夜行絵巻』（真珠庵所蔵）などがこれに該当し、美術品としても高い評価を受けています。
分類絵巻: 妖怪の絵に名称を記した、図鑑のような形式の絵巻です。江戸時代に多く制作され、妖怪の知識を整理・伝達する役割を果たしました。『化物之繪』や『百怪図巻』などが代表例です。
説話絵巻: 妖怪の絵に、その妖怪にまつわる説話や情報を添えた絵巻です。妖怪の姿だけでなく、その背景にある物語や伝承を知ることができます。『蕪村妖怪絵巻』や『土佐お化け草紙』などが挙げられます。

主な妖怪絵巻の例

以下に、主な妖怪絵巻の例をいくつか紹介します。

物語絵巻

『付喪神絵巻』: 室町時代頃に制作された絵巻で、古くなった道具が妖怪「付喪神」となる様子を描いています。
『百鬼夜行絵巻』: 室町時代から江戸時代にかけて描かれた絵巻で、様々な妖怪たちが夜の街を練り歩く様子を描いています。

分類絵巻

『化物之繪』: 江戸時代前期に制作された絵巻で、様々な妖怪の姿を簡潔な絵と名称で示しています。
『百怪図巻』: 1737年に描かれた絵巻で、作者の想像による妖怪が多く描かれているのが特徴です。
『化け物尽くし絵巻』: 1820年に制作された絵巻で、ユーモラスな妖怪たちの姿が描かれています。
『百鬼夜行絵巻 (松井文庫)』: 1832年に制作された絵巻で、様々な妖怪たちが楽器を演奏しながら行進する様子が描かれています。
『怪奇談絵詞』: 幕末から明治にかけて制作された絵巻で、妖怪にまつわる怪談が描かれています。
『怪奇鳥獣図巻』: 江戸時代に制作された絵巻で、『山海経』に記されている奇怪な鳥獣を描いています。
『ばけ物つくし帖』: 幕末から明治にかけて制作された画帳で、様々な妖怪の姿が描かれています。

説話絵巻

『蕪村妖怪絵巻』: 1754年頃に制作された絵巻で、妖怪にまつわる短い物語が添えられています。
『土佐お化け草紙』: 江戸時代中期から後期にかけて制作された絵巻で、土佐（現在の高知県）に伝わる妖怪の説話が描かれています。
『ばけもの絵巻』: 明治時代に制作された絵巻で、様々な妖怪の絵と解説が記されています。

妖怪絵巻からわかること

妖怪絵巻は、当時の人々の生活や文化、信仰などを知る上で貴重な資料となります。妖怪の姿や特徴、妖怪にまつわる物語や伝承を通して、当時の人々の世界観や価値観を垣間見ることができます。また、妖怪絵巻は、現代の漫画やアニメ、ゲームなどの創作物にも大きな影響を与えており、日本の文化を語る上で欠かせない要素となっています。

参考文献

湯本豪一編著『妖怪百物語絵巻』国書刊行会、2003年。ISBN 978-4-336-04547-8。
* 湯本豪一『妖怪あつめ』角川書店、2002年。ISBN 4-04-883753-2。

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