薁鞬左賢王単于

薁鞬左賢王単于（いくけんさけんおう ぜんう）

薁鞬左賢王単于は、後漢時代に南匈奴で短期間存在した対立単于です。彼は呼都而尸道皋若鞮単于の子で、蒲奴の弟にあたります。元々は北匈奴の薁鞬左賢王でしたが、後に自立し単于を称しました。彼の出自、南匈奴との対立、そして最期について詳細に解説します。

生涯

出自と即位

薁鞬左賢王は、呼都而尸道皋若鞮単于の子として生まれました。兄の蒲奴が単于に即位すると、彼は薁鞬左賢王に任ぜられました。当時の匈奴は内部対立を抱えており、その勢力は不安定でした。

南匈奴の成立と対立

建武24年（48年）の冬、右薁鞬日逐王の比が呼韓邪単于を称して自立し、南匈奴を創始しました。これにより、匈奴は南北に分裂し、蒲奴が率いる勢力は北匈奴となりました。薁鞬左賢王は北匈奴に留まりましたが、南匈奴との対立は避けられませんでした。

北匈奴の苦境

建武25年（49年）、南匈奴の左賢王である莫が1万の兵を率いて北匈奴を攻撃しました。この戦いで薁鞬左賢王は生け捕られ、北匈奴の本拠地である単于庭が破られるという大打撃を受けました。北単于の蒲奴は、本拠地を放棄し1千余里も退却せざるを得ませんでした。

単于として自立、そして最期

建武26年（50年）の夏、薁鞬左賢王は捕えられていた北匈奴の民衆と5人の骨都侯ら計3万余人を率いて反乱を起こし、北庭から300余里の地点で単于に推戴されました。しかし、その政権は長くは続きませんでした。わずか1か月余りの間に内部抗争が激化し、互いに攻撃し合う事態に陥りました。最終的に、5人の骨都侯は戦死し、薁鞬左賢王自身も自殺するという結末を迎えました。

まとめ

薁鞬左賢王単于は、匈奴の南北分裂という動乱の時代に現れた人物であり、その短い生涯は、当時の匈奴社会の混乱と内部対立を象徴しています。彼の出自から南匈奴との対立、そして自立と最期まで、彼の足跡は匈奴史における重要な一章として語り継がれています。

参考資料

『後漢書』（南匈奴列伝）
内田吟風『北アジア史研究 匈奴篇』（同朋舎出版、1988年、ISBN 481040627X）

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