薛道衡

薛道衡（せつ どうこう）

薛道衡（540年 - 609年）は、中国南北朝時代から隋にかけて活躍した文学者です。字は玄卿。北斉から隋にかけて仕え、その文才は当時の人々から高く評価されました。

生涯

薛道衡は、幼い頃に父を亡くしましたが、学問に励み、13歳の時には『春秋左氏伝』を読んで才能を発揮しました。北斉では、使者の応対や詔勅の起草などを担当し、盧思道や李徳林らと並び称されるほどの文名を確立しました。

北斉滅亡後は、北周、そして隋に仕えました。584年には陳への使者として赴き、その詩文は江南の人々を魅了しました。しかし、592年に讒言により嶺南へ左遷される憂き目に遭います。当時、揚州にいた晋王楊広（後の煬帝）は薛道衡を幕僚に誘いましたが、薛道衡はこれを拒否したため、楊広に恨まれることになります。

その後、召還命令を受け、内史侍郎に任じられましたが、604年に文帝が崩御し煬帝が即位すると、薛道衡は再び左遷されます。煬帝は薛道衡の才能を妬み、彼が奉った頌文を「先朝を賛美するのは自分への当てこすりだ」と解釈し、薛道衡を陥れようとしました。

609年、法律の議論の際、薛道衡が「（陛下が）高熲を死なせなかったら、法令はとうに執行されているだろうに」と漏らしたことが、煬帝の逆鱗に触れます。御史大夫の裴蘊は、かねてから煬帝が薛道衡を憎んでいることを知っており、この発言を煬帝に報告しました。煬帝は薛道衡を処刑することを決意し、自殺を命じました。薛道衡は突然の命令に驚き、受け入れることができませんでしたが、最終的には縊殺されました。享年70歳。その死は、多くの人々に冤罪であると受け止められました。

煬帝は薛道衡の死後、「これで『空梁に燕泥落つ』のような句は作れまい」と言ったと伝えられています。この言葉は、煬帝が薛道衡の才能を深く妬んでいたことを物語っています。

薛道衡は、音韻の研究にも貢献しており、陸法言の『切韻』編纂にも関わったとされています。

著名な作品

薛道衡の作品は、『隋書』や『北史』に伝記が残されています。

伝記資料

『隋書』巻57
『北史』巻36

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