薬丸兼利(生没年不詳)は、
薩摩藩士であり、
薬丸兼成の子、薬丸兼陳の父です。
通称は新蔵、大炊兵衛、刑部丞、半左衛門(または伴左衛門)と記録されています。
経歴
1613年(
慶長18年)の「古高帳寫」には、「薬丸大炊兵衛殿 高57石5斗8舛」と記載されており、この頃には大炊兵衛を名乗っていたことがわかります。
1620年(元和6年)の高極帳では「高83石 薬丸大炊兵衛尉殿」とあり、徐々に加増されていたことが伺えます。
1624年(
寛永元年)11月17日には、父である薬丸壱岐守への加増分として、高山
郷塚崎村(現在の
鹿児島県肝付町)の新五左衛門尉屋敷17石を知行します。この時の
通称は刑部之丞でした。
1632年(
寛永9年)の「
寛永9年高帳写」では「薬丸伴左衛門殿 115石」とあり、この時期に刑部之丞から伴左衛門へ
通称を改めたと考えられます。
1636年(
寛永13年)の「鹿児嶋衆中屋敷御検地帳」によると、『新堀の下』に『薬丸伴左衛門 下屋敷 5畝10歩』を所有していたことが記録されています。また、同じ場所に東
郷肥前守の下屋敷があったことも記されており、「示現流聞書喫緊録付録系図」には、子の兼陳が東
郷家の近所に住んでいたとされています。
1647年(
正保4年)には、長崎に南蛮船が来た際、40人鉄砲頭を務めました。
人物像
「本藩人物誌」においても、父である
薬丸兼成に比べて記述が少なく、「示現流聞書喫緊録付録系図」では兼利について触れられていません。「鹿児島市史III」所収の「薬丸家文書」の「薬丸家系図」でも、系図は子の兼福から始まっており、先祖の業績についての言及もありません。これらのことから、兼利に関する情報は非常に限られていることがわかります。
葬所も不明ですが、父の兼成は
浄土宗養泉山無量寺不断光院に、子の兼陳は
曹洞宗松原山南林寺に葬られています。そのため、兼利もこのどちらかに葬られた可能性が高いと考えられますが、
明治初年の
廃仏毀釈により両寺とも廃寺となり、記録が残っていないため、詳細は不明です。
系譜
父:薬丸兼成
母:不詳
妻:不詳
男子:薬丸兼陳
備考
薬丸兼利に関する記録は非常に少なく、その人物像は謎に包まれています。しかし、
薩摩藩士として、また薬丸家の一員として、その時代を生きたことは確かです。今後の研究によって、新たな事実が明らかになることが期待されます。
参考文献
「鹿児島市史III」
「本藩人物誌」
「三国名勝図会」
「示現流聞書喫緊録付録系図」
* 「鹿児島士人名抄録」高城書房