藤井仁子

藤井 仁子

藤井 仁子（ふじい じんし）は、1973年生まれの日本の著名な映画批評家であり、早稲田大学文学部で教鞭をとる教授です。また、テアトル・オブリークという活動を主宰するなど、多角的に映画に関わっています。

経歴

藤井氏は、京都大学法学部を卒業後、同大学院人間・環境学研究科の修士課程を修了しました。学究の道を歩み始め、立教大学文学部で助手を務めた後、早稲田大学文学部の教授に就任し、現在に至ります。

映画界や学術界においてもその知見を活かしており、京都映画祭の専門委員を務めたり、日本映像学会の機関誌編集を担当する常任理事を務めるなど、要職を歴任しています。

批評活動と主な業績

藤井氏の批評活動は、多様なジャンルに及びます。特に現代ハリウッド映画に関する研究は早くから注目を集め、2008年には編著『入門・現代ハリウッド映画講義』を人文書院から刊行しました。この書籍は神戸映画資料館や専門紙である『週刊読書人』など、様々なメディアで取り上げられ、大きな反響を呼びました。

また、日本映画史や特定の監督に関する研究も深く行っています。2009年には、記録映画アーカイブ・プロジェクトの一環として、岩波映画が制作した『佐久間ダム』に関する詳細な報告を行いました。2011年には、木村建哉氏、中村秀之氏と共に編著『甦る相米慎二』をインスクリプトより出版し、夭折した名匠、相米慎二監督の再評価に貢献しました。岩波映画に関する研究は継続され、2012年には丹羽美之氏、吉見俊哉氏が編纂した『岩波映画の1億フレーム』に論考を寄稿。この論考は詩人の管啓次郎氏から高い評価を得ました。

さらに、同2012年には雑誌『MIRAGE』の『Playback』特集において、三宅唱氏や四宮秀俊氏といった映画監督、映像作家との鼎談に参加するなど、同時代のクリエイターとの対話を通じた批評活動も積極的に行っています。

2023年には、是枝裕和氏をはじめとする現代日本映画の担い手たちへのインタビューをまとめた編著『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』（フィルムアート社）を共同で手掛けるなど、教育・批評活動の枠を超えて、映画制作の現場との交流も深めています。

著書

藤井氏は、編著、共著、訳著を通じて、映画に関する広範な知識と深い考察を発表しています。主な著作は以下の通りです。

編著

『入門・現代ハリウッド映画講義』（人文書院、2008年）
『甦る相米慎二』（インスクリプト、2011年、木村建哉・中村秀之と共編）
『森崎東党宣言!』（インスクリプト、2013年）
『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』（フィルムアート社、2023年、是枝裕和・土田環・安藤紘平・岡室美奈子・谷昌親・長谷正人と共編）

共著

『光と影の映画史 撮影監督・宮川一夫の世界』（キネマ旬報社、2000年）
『映画の政治学』（青弓社、2003年）
『映画と「大東亜共栄圏」』（森話社、2004年）
『日本映画とナショナリズム 1931-1945』（森話社、2004年）
『成瀬巳喜男の世界へ』（筑摩書房、2005年）
『スピルバーグ 宇宙と戦争の間』（竹書房、2005年）
『映画と身体/性』（森話社、2006年）
『ヴィジュアル・クリティシズム 表象と映画=機械の臨界点』（玉川大学出版部、2008年）
『岩波映画の1億フレーム』（東京大学出版会、2012年）

訳著

『わたしは邪魔された ニコラス・レイ映画講義録』（みすず書房、2001年、ニコラス・レイ著、加藤幹郎と共訳）

これらの著作活動を通じて、藤井仁子氏は現代日本における映画批評、映画研究の発展に寄与し続けています。その活動範囲は学術研究に留まらず、様々な媒体での発言や企画を通して、広く映画の魅力や奥深さを伝えています。

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