藤井勇

藤井勇：日本プロ野球史に名を刻んだ名選手

藤井勇（ふじい いさむ）は、1916年10月20日、鳥取県鳥取市に生まれた元プロ野球選手である。外野手として活躍し、数々の記録を残しただけでなく、コーチ、監督として後進の育成にも尽力した、日本プロ野球界に多大な貢献をした人物と言えるだろう。

華々しいデビューと輝かしい記録

鳥取一中時代には4番打者として甲子園に3度出場。1934年夏の甲子園では、強豪・京都商業を破るなど、早くからその実力を発揮した。1935年11月、大阪タイガースと入団契約を結び、翌1936年、日本職業野球連盟発足とともにプロ野球リーグ戦がスタート。この最初の公式リーグ戦で、藤井は歴史的な記録を残すことになる。

1936年春のリーグ戦、5月4日の東京セネタース戦で、野口明投手から放った一打は、日本プロ野球公式戦における最初の本塁打となった。この大会では5試合に出場し、19打数10安打、打率.526という驚異的な成績で、首位打者、最多安打、本塁打王の三冠王に輝いた。その後も、春夏を通して全試合に出場し、高い打率を残し、チームの優勝に貢献した。

1937年には春シーズンで2シーズン連続の最多得点（49得点、これは2シーズン制における日本記録）を記録。秋シーズンには、チームの初優勝に貢献し、打点王に僅か1打点差に迫る36打点を挙げた。さらに、年度優勝決定戦では、東京巨人軍の沢村栄治を打ち崩す活躍を見せ、チームの年度優勝に貢献した。

その後も大阪タイガースの中心選手として活躍し、1938年の春と年度優勝にも貢献。当時の大阪タイガースの打線は、松木謙治郎、山口政信、景浦將ら強打者揃い、藤井はそのクリーンナップを担う重要な役割を担っていた。

戦争と復活、そして大洋での活躍

1939年には軍に召集され、戦時中は野球を離れることとなる。1945年末に復員後、朝日軍（後にパシフィック、太陽ロビンス、大陽ロビンスと改称）と契約するも、大阪タイガースとの二重契約の可能性が疑われ、出場停止処分を受ける。しかし、1946年5月に公式戦に出場したことで、処分は確定。その後、大洋ホエールズに移籍。

1950年、ベテランとして4番打者に抜擢されると、140試合に出場し、34本塁打、122打点、177安打という自己最高の成績を残した。122打点は、1999年にロバート・ローズに破られるまで、横浜球団記録として半世紀以上も続いた記録である。1951年には、1試合4二塁打の日本記録も樹立するなど、1958年まで現役選手として活躍した。

監督、コーチとしての貢献

1955年には兼任監督に就任するも、チームの戦力不足から31勝99敗という、リーグ最多敗戦、最低勝率という記録を残し、同年限りで辞任。その後は選手兼任監督の経験を経て1958年に現役引退。引退後は、大洋、大毎、阪神などでコーチや監督を務め、数多くの若手選手を育成した。大洋では桑田武や近藤昭仁、二軍監督時代には米田慶三郎や福嶋久らを育てた。阪神では田淵幸一らを指導した。

1973年に病気のため退団後は運動用品メーカー勤務の傍ら、田淵幸一の個人的アドバイザーを務めるなど、野球界への貢献は最後まで続いた。1986年、死去。

藤井勇は、選手として、そして指導者として、日本プロ野球史にその名を刻んだ、紛れもないレジェンドと言えるだろう。彼の功績は、これからも語り継がれていくに違いない。

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