藤井巳幸

藤井 巳幸（ふじい みゆき）

日本の元女子プロレスラー。1977年12月17日生まれ、三重県三重郡出身。約13年間の現役生活を通じて、波瀾万丈なキャリアを築き上げた。

デビューと苦闘の新人時代

プロレスラーとしての第一歩を踏み出したのは1996年9月16日、全日本女子プロレスのリングであった（デビュー戦の相手は中西百重）。鳴り物入りとは言えないデビューであり、当初は体格や技術面で他の選手に比べて劣っていたため、「女子プロレス史上最も力が弱い選手」といった厳しい評価を受けることもあった。しかし、この困難な時期には、先輩レスラーである堀田祐美子に付き、プロレスの基礎や心構えを学ぶ貴重な経験を積んだ。

「サソリ」への変貌と極悪同盟

藤井巳幸のキャリアにおける最大の転機は、2003年5月13日に訪れた。この日、横浜アリーナで行われた異種格闘技戦でエリカ・モントーヤと対戦したが、三角絞めによる一本負けを喫する。誰もがこの敗北で終わりかと思ったそのわずか1時間後、彼女は全く異なる姿でリングに再登場した。頭髪を全て剃り落としスキンヘッドにし、頭部には毒々しいさそりのペイントを施した「サソリ」として悪役（ヒール）へと大胆な転向を果たしたのである。この変身を機に、ダンプ松本が再結成した悪名高い新生極悪同盟に加入。師匠であるダンプ松本との間には強固な絆が生まれ、プロレスラー引退後も師弟関係は続いている。

異分野への挑戦とエンタメプロレス

プロレスのリング以外にも、藤井は様々な挑戦を行った。2004年にはボクシングに挑戦し、デビュー戦を見事に勝利で飾ったが、続く日本ミニフライ級トーナメントでは残念ながら初戦で敗退した。

また、2008年5月6日には、独特の世界観で知られるエンターテインメントプロレス団体「マッスル」の興行、マッスルハウス6に参戦。この大会で「今年一番運気の良いレスラー」に選ばれるという異例の展開から、当時のIMGP王座保持者であった飯伏幸太からタイトルを奪取するという快挙を成し遂げた。さらに同日中に行われたマッスル坂井、男色ディーノとの3WAYマッチでは、獲得したばかりの王座の初防衛にも成功。マッスル名物のスローモーション演出における独白では、自らを「ガチ☆ガール」と称し、その個性を強く印象づけた。

引退、そして新たな道へ

約13年に及ぶプロレスラーとしての活動は、2009年4月29日の極悪同盟主催興行をもって終止符が打たれた。現役時代の戦績は必ずしもトップクラスではなかったものの、藤井の持ち前の明るく飾らない人柄は、全日本女子プロレス時代の先輩、同期、後輩から深く慕われていた。その人望もあり、引退セレモニーにはダンプ松本や堀田祐美子をはじめとする多くの関係者が駆けつけ、感動的な門出を祝った。

引退から時は経ち、2016年1月には、かつての仲間である亜利弥’（ありや）の自主興行にダンプ松本のセコンドとして登場し、久々に公の場に姿を見せた。そして現在、藤井巳幸は自身の出身地である三重県に戻り、県内のスポーツクリニックにてスポーツマッサージやトレーニング指導といった専門知識を活かした仕事に携わっている。選手としての経験を生かし、地域社会におけるスポーツ振興や人々の健康づくりに貢献する新たな道を歩んでいる。

主な得意技

ラ・マヒストラル
エルボー
サソリ・クランプ
ブレーンバスター・ホールド

獲得タイトル

全日本シングル王座
IMGP世界ヘビー級王座 (第6代)

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